今回はベルリンで行われているアートメッセ 、 Art Forumについて書こうと思います。 私は2002年開催のメッセには足を運べなかったのですが、2001と2000年には行きました。 ちなみにこのレポートは2000年のものです。2001年はちょうどワールドトレードセンターがテロを受けた後で、全ての雰囲気が非常に静かに、落ち込んでいたました。 NYを初めとしたアメリカのギャラリーが不参加で会場が大幅に小さくなっていたと言うことだけでなく、その場の人たちが知り合いの作家が、 そういったテロの中にいたり、といったことで気持が落ちていたということがあったと思います。 アートの力について、改めて疑問と不安が起こり討論が行われたり、メッセ会場で脱力しているギャラリストやアーティストも多くみられました。

2000年のArt Forumの様子。
 ケルン、フランクフルトなどドイツの大きな街で行われているドイツのアートメッセ。 やっぱり各都市でコレクターの層が異なるのでしょう、同じギャラリーでも出展場所によってプレゼンテーションの仕方が違うので面白いです。 ベルリンはまだ若い市場なので、まだあまり知られていない、価格の定まっていないアーティストの作品が多く、コレクターも、掘り出し物を探そうとして来てるという印象を受けました。 ちなみにケルンで行われている ART-Cologneはドイツ最大で毎年7万人以上もの来場、約260のギャラリーの出店があり、コレクターも手堅く買おうとしている感じです。ちなみにベルリンの前年度は来場2万5千人弱、出店ギャラリーは約180。
ベルリンに限らずドイツ中、モスクワ、ロンドン、ニューヨーク、オスロ、アムステルダム、東京、大阪(2002年には不参加)25カ国から様々なギャラリーが出典し、多くは、出展料(約25万)より儲かって帰るといいます。(本当??)
私は、各国の現代美術の傾向とこれからの展開を見、また、どんな人が来るのか、どんな作品がどれくらいの値段で売れているのか、ということに興味があって行ってきました。

 本来、メッセというのは売るための場なので、ギャラリーは買いやすい絵画や写真を中心に出品してきます。 しかしベルリンではパフォーマンスあり、芸術家団体の出品あり、コンセプト展示だけのまであり、他都市のアートメッセより、売る行為に重点を置いていないように思われました。 派手にやってコレクターの興味をひき、名前を知ってもらうというのが他の都市よりココではけっこう重要視されているのかもしれません。
その中でも人目をひいたのが、あるデュッセルドルフのギャラリーの展示。まったく値段の付いていないブースに、なにやら奇妙な形のイスと机と、茶色い絵と彫刻。 最初通った時には全部を見ようと早足で歩いていたので素通りだったのですが、もう一度回った時に、何故かそこに人や取材陣が集まっていてたので、なんだろう? とよくよく近寄ってみてみると、なんと、そのギャラリーブース全てがお菓子だったのです!

招待客の中には子連れも多く、
子ども達は大喜びで
せっせと作品を“味わって”いました。
このテーブルと、上に置いてあったコップまで飴製!
虫歯になりそうです。






なかなか美味しかった壁と絵。
この後1時間くらいしてまた来たら、
このチョコレートの絵は
8割方無くなっていました。

まるでヘンゼルとグレーテル!
壁はちょっと和菓子の松風に似たケーキみたいなものに砂糖衣(これが一番美味しかったので、私はそこにいた人と協力してバリバリと大幅に引き剥がし、存分に作品を“味わい”ました!)絵だと思ってたのはチョコレートと飴、机と椅子は飴、彫刻は巨大なチョコトリュフ。そこに群がり、オープニングで無料のワインを片手に壁を壊し、彫刻をねじ切り、絵を叩き割って食べる人達。食べられる作品だということも面白かったですが、その周りにたかっている人達の表情や行動の方が面白かったです。メッセのオープニングで、洒落た格好をしているのに、飴の机を叩き割ろうと必死になっている人とかも居て、これが実はアーティストの意図かなあ?と思いました。ちなみに、これを作ったのは、ソニヤ・アルホイザーという30代のアーティスト。これ自体は売ることはできなかったのでしょうが、色んな局のニュースでも報道され、たくさんコレクターの人が(食べるためだけでなく)来て、すごい宣伝効果があったと思います。同じギャラリーをケルンのメッセで見かけましたが、まったく普通のブース、食べられる作品は片隅に一つあるだけで、絵画をメインにしていました。
ベルリンとケルンのメッセに出品する際のギャラリーの心構えの違いをはっきり見た気がしました。

(この文章は2000年秋、mienai-tenMLのために書かれた文章を訂正加筆、写真を加えたものです。)




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