ライプツィッヒに行って来ました!
ライプツィッヒにあるGfzK(Galerie fuer zeitgenoesische Kunst, 現代美術のためのギャラリー、の略)で友人が展覧会を行っていて、彼女が教えている学生達を連れて遠足がてら、行かない?と誘われ、もともとこのGfzKが大好きだったので、もちろん!!というわけで、行く事に。
今回の展覧会のテーマは“公共、プライベート”。ここのギャラリーではいつもゲスト・キュレーターを呼び、古今東西の若い作家から古い作家まで上手に作品を組み合わせ、“面白い作品をみた”、ではなく“面白い展示をみた!”という気持ちにさせてくれる良い展示を開催しています。
この展覧会では、東西ドイツで公表されていた“プライベートなイメージ”を中心に構成されています。そういう意味では、前回書いた『旧東独の美術/Kunst in DDR』と比較できる部分もあるのですが、全体的な印象としてこの展示の方が、伝えるものが大きい気がしました。 『旧東独の美術』展では作品の量が多く、『歴史から脱落しなければならなかった美術を見て、もう一度美術として存在させようと努力』したわりには美術としてのメッセージはあまり伝わってこず、 何がどう影響してこの作品が当時歴史から脱落せねばならなかったのか?というのが分かりませんでした。
しかし『公共、プライベート』では、例えば旧東独のundula Schulze Eldowy の“Tamerlan”を目にし、カメラの後ろの静かな観察する目、 その前に立ち自らの姿をさらしているカラダに胸をつかれ、その写真が旧東独時代は展示を禁止されていたという事実に驚きます。 またこの展示が良いなあと思ったのは、この『公共とプライベート』という大きなテーマに、庭、駐車場、記憶等扱っている作家を選び、『公共とプライベートの合間にあるのが“庭”なんだなあ!』と思わせてしまう所です。 作品を展示するだけではなく、その作品のテーマからさらに次のイメージの広がりを作ってみせ、そこに観客をもっていく事ができる展示は、あまりありません。
ちなみに上の写真はTobias Zielony というまだライプツィッヒで学生をやっているアーティストの作品で、ケムニッツの駐車場を撮ったシリーズ。確かに駐車場も車という閉じられた空間が並ぶ、不思議な公共空間ですよね。


さて、私がこの展示でとても気に入ったのが庭、をテーマにした右写真の作品。
Margit Emmrlich という旧東独の女性アーティストです。
“庭”というプライベートな空間である家に属しながらも公共性を持つ場所をテーマにした写真をビデオに落とした作品や、色々な家族の庭を訪ね、庭造りのコンセプトなどを聞き、写真と並べあわせた作品などが展示されていました。 ガーデンパーティ、庭に設置された遊具で楽し気に遊ぶ子ども達。家の中からの目と外からの目が入り交じる場所、庭を追う興味深い作品でした。 ビデオに合わされた音楽はヤン・シュワンクマイエルを思わせる感じで、学芸員さんは『東独っぽい』と表現していました。

“外からの目、内側からの目”、というのはこの展示では作品だけでなく、展示空間そのものでも表現されています。
私がこのギャラリーが好きな理由は、こういった、空間そのものが表現となっている所にあります!!
左写真は展示空間の窓。この展覧会のキーワードとなる言葉が“外に向けて”プリントされています。その言葉は私達に向かってはサカサマで、それらの文字を透かしてみえる外の風景、その風景と自分を隔てる場所にあるそのキーワードが響いてきます。

さて、最後に、私の友人Wiebke Loeper の作品を紹介したいと思います。 彼女の作品は、彼女の記憶の断片をつなぎあわせたものです。彼女は仕事をしている合間にパシャパシャと、風景を撮っている事がけっこうあるのですが、こういった、ふとした瞬間に撮っている写真が、穴が開いた状態で並べられています。 同じベルリン、旧東独地区に住んでいる私の目にも写っている、夜の湿気た空気に溶けるアレクサンダープラッツ、フォーラムホテル。 灰色のビルの隙間。キッチュなフルーツ柄のビニールテーブルクロス。髪の抜けた人形。それらのイメージは3列に並べられていますが、抜け落ちた部分があり、イメージをこちらに紡がせます。
すこし彼女の世界には場所が狭いような印象を受けましたが、続けてまた色々と見て行きたいなあと思わせました。
展示を見た後、彼女と彼女が写真を勉強したライプツィッヒの美術大学を見、彼女の旧友達のアトリエを回り、ライプツィッヒの街を見て歩きました。 ベルリンに比べ、寂しい感じもあるこの街ですが、私はそこがとても好きです。一生住みたいかと言われると困りますが、時々来て、冷たい空気に頭をさらしたい、と思う場所なのです。 そして、このギャラリー!キュレーターの人はまるでアイディアの泉!といった感じの人だとか。ライプツィッヒに来ることがあったらぜひ訪ねてみて欲しいと思います。

GfzK: Karl-Tauchnitz str. 11 Leipzig
www.gfzk.de




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