統一したといっても、西と東が未だに違っている所があります。それは信号。
信号のデザインが東と西によって違うのです。壁崩壊後、これら信号のデザインも統一しようというわけで、場所によっては西のデザインに変えられてしまったものもありましたが、“このデザインを残せ!”“アンペルメンヒェン(信号小人、この信号の人型の呼び名)を救え!”という抗議が旧東独で起こったため、この信号のデザインは保護、残されることになりました。
旧東ドイツの信号のデザインは1961年、壁が作られた年に交通心理学者(こんな職業があるんですね!)Karl Peglau さんによって考えだされました。
このデザインは他の信号のデザインに比べ、太くて短い足、短かくて太い胴、大きな頭で、緑や赤の部分の面積が大きく、子どもや目の悪い人達でもはっきりと識別できるようになっています。また日常生活にちょっとしたユーモアを運ぶために、と考えられたこのデザインの人マークはつばの広い帽子をかぶっています。

西側の信号。緑
西側のデザイン
東側の信号。緑
東側のデザイン
東と西デザインが並ぶ赤信号
手前右が東のデザイン、奥左が西のデザイン。
壁崩壊後、西のデザインにかえられてしまった部分と、東のデザインが残された部分と、 それが入り交じっている所に、ベルリンらしさを感じます。 よく行く写真屋さんのある道では、市電が真中を突っ切っているため、3つの信号機がありますが、 二つは東のデザイン、もうひとつは西のデザインなのです。 別に国境だった場所でもないので、多分、信号機を取り替える工事をしている最中に、“このデザインを残せ!”運動が始まって、 最後の一つは取り替えないままにされたのかな、それとも途中でお金がなくなって工事が頓挫しているところに運動が起こったのかな、 と、通る度に想像します。日本だったら、一つの道は一応統一感があった方が良いとか、考える気もするんですけれど。
この話を書こうと思って、日本の信号と比較しようとしたら、もう既に日本の信号のデザインを忘れていました。(笑) もう2年半日本に帰国していないとはいえ、こんなに簡単に忘れてしまうとは・・普段いかに気を付けてみていなかったかを痛感します。 写真をみてみると、図柄が反転しているんですね。これもきっと、緑や赤の部分の面積を大きくし、みやすくするためなのでしょう。 ドイツの人型に比べ、日本の人の歩き方はちょっと膝が曲がっている様ですね。これはきっと歩き方の違いにあるのだと思います。 靴を作品にして、それを履いて歩いている所を写真に撮ってもらったので、 皆がどう歩いているか、歩いている時にどれくらい足の裏がみえるのか、注意していたのですが、 アジア人一般、足の裏が全然みえないんです。すり足というか。 ドイツ人は腰から足が動いていて、歩幅が大きく、足を上げてからまた地面につくまでの滞空時間が長いです。 人をかたどったものですから、人種が違えばデザインが違うのも当たり前といえばそうなのですが、こういうのが観察できるのは面白いです。


保存運動が起きるくらい皆に愛されている、この旧東ドイツの信号デザイン。 最近はキャラクターグッズの店などもでき、大抵のお土産屋さんではこのグッズを取り扱っていますが、その中でもドイツらしさを感じるものがあります。 そう、この信号をかたどったグミがあるんです。 ちなみに色が他のにましてどぎつく、味も美味しくないし、固さも、なんか変な感じなのですが、興味がある方はぜひお土産にどうぞ。


11月のキロさんから、最近の日本の信号の写真も頂きました。(右写真)最近は日本にもこのタイプの信号があるんですね。 しかもこの写真を見る限りではどうも帽子をかぶっているみたいにみえるんですが!!!なんと!ドイツのアンペルメンヒェン流行が日本にも伝染したのでしょうか??

*付足
2007年5月。アンペルメンヒェン・グッズの売れ行きはすごいようで、 どうやら、日本にも支店ができたという話を聞きました。でも、ベルリン土産のお店を日本にオープン?不思議な気もしますが、デザイン的に良いということなのでしょうか。
アンペルメンヒェンのコピーライトを全面的に所有することとなった、このグッズショップの創立者さんは、 先日、ドレスデンなどで始まった、アンペル・メートヒェン(アンペルマンの女の子版)の肖像権も所有しているらしいです。 ベルリンのデザインショップか何かで、この女の子バージョンのアンペルマンをプリントしたカップが売られていたそうで、 そのショップオーナーを相手取って、裁判を起こしていると言う話を読みました。 やれやれ。
アンペルマン自体、最近では西側に『新設される』アンペルマンも増えて、一概にアンペルマン信号があるから旧東側 と言えなくなってきました。 ・・ちょっと残念だったり。(2007年、5月筆)
上写真真:尹智鉉
下写真:11月のキロさん




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