『Good Bye Lenin!』見て来ました!
上映場所が旧東独のプレミア映画館とあって、趣向をこらした非常に面白い上映会となり、映画だけで無くその雰囲気までも楽しめて良かったです!
右写真は映画館、Internationalの内装の様子です。壁には当時のように旧東独の大きな旗が掛けられ、独特の東独デザインライトの下で雰囲気を醸し出しています。

さていよいよ入場し、上映時間となると、旧東独の国家が流れ、会場は大盛り上がり。 司会とともに旗を掲げた人が現れ、司会が『今日は党の記念日に・・』と東独スピーチ口調で口火を切るともう、大笑い。 『ここは旧東独のプレミア上映用の映画館で、エーリッヒ・ホーネッカーのいつも座る席は8列目の15番目でした!』 (ちなみに私は9列目の10番目くらいに座っていました。)そのあと独特の内装の説明があり (スパンコールのしましまの幕がもともとあった物をリサイクルして作られたため、部分的に変なふうに縫い合わされている部分があるとか)いよいよ映画が始まりました。

映画は、話自体は良く考えると別になんということはない話かとは思ったのですが、細かに出てくる、ああ昔はこうだった、とか旧東独の人が感じていた気持がそこここに小さく、しかし頻繁にちりばめられ、会場は笑ったり、拍手が起こったり。ちょっとほろ苦い秀作コメディ!!
私も、ベルリンに来てから仕入れたにわか情報でありながらも、東ドイツの事は少々知っていましたので、大体同じ所で笑うことができました。
しかし、デモ行進、旧東独秘密警察Stasiの逮捕の様子、それからニュース映像かと思われる、壁崩壊前後の映像は、大画面で見ると想像以上に胸に迫る物がありました。
壁崩壊時、私は中学生。映像を見ても、一体何がどうなって、誰が何をやって、という話はあくまでも教科書に書いてある文字以上にならなかったのですが、やはり自分が今ベルリンにいて、知っている場所なども出て来るので(そういった場所は今は多くが工事中となっていてそれも感慨深し)、非常にリアルに感情移入してみてしまいました。
さて映画終了後は母親役のKatrin Sass、息子アレックス役のDaniel Bruehl、監督のWolfgang Beckerがやって着ました。(右写真。右から、監督、Bruehl、Sass)
質疑応答はなかったのですが、旧東独出身のSassに対し『旧東独時代を知っている人としてどう感じますか?』という質問が。
彼女は『統一したドイツでこの場所に立つことができて感慨深いです』と答えました。
その後、映画館からアレクサンダープラッツ、テレビ塔までの道を歩いて行くと、なんだか映画とだぶって、自分が違う所にいるような、歴史の中にいるような(居るのですけれど)気持になり、ちょっと景色が違ってみえました。

おまけ:

(c) X Verleih AG

この映画の中で息子の彼女を演じているロシアの女優さん、チュルパン・ハマートヴァについて。『ルナ・パパ』『ツバル』などが日本で公開され、日本でも人気があるという彼女はタタール人でチュルパンという名前もタタール語で「明けの明星」という意味だそうです。
『Good Bye Lenin!』では息子アレックスの彼女、ロシアから交換留学のような形でやってきた見習い看護婦の役。初めて2人がすれ違った、DDR建国40周年の日に行われた自由へのデモのシーンから、くるっと丸い大きな黒目で深い印象を残します。その後、昏睡に陥った母のいる病院で再会するわけですが、白衣、DDRっぽいワンピース姿など、ベルリンでは珍しい(寒いから)素足を出した格好で動き回り、可愛い色気を醸し出していました。アレックスと2人で、人が居なくなった旧東ベルリン側のアパートに忍び込み、飛び回るシーン、もう母親に嘘をつくのは止めて!と怒るシーンでは彼女の顔から溢れ出るその表情から目が離せません。
他の出演作は『ルナ・パパ』『ツバル』の他『England』『Viktor Fogel』等、ドイツの監督作が多いようです。『ルナ・パパ』では『ラン・ローラ・ラン』のモリッツ・ブロイプトロイと兄妹役。
『ツバル』は未見ですが、「字幕なしで世界中の人に見てもらいたい」という構想で作られたという映画、今非常に興味をそそられています。ほぼサイレントに近い中ではきっとますます、彼女の顔の表情の豊かさが生きているかと思います。『Good Bye Lenin!』では、眉毛があがりさがりするくらいで表情があまり変わらないアレックスの母と好対照。
さてこの映画で今年のベルリン映画祭若手俳優の中でダントツに注目され、シューティングスターとしてドイツだけでなく、アメリカ、欧米各国で人気となったDaniel Bruehl 。映画雑誌のほとんどが彼のインタビューをこぞって載せていましたが、チュルパンさんはどうだったのでしょうか。
Press用に毎日出版されていたScreenという冊子には、チュルパン・ハマトーヴァの代理人と間にコミュニケーションの行き違いがあった、と書かれています。それによれば、代理人は「彼女はこの映画が南アフリカで撮影されると思っていた」と主張。監督Wolfgang Beckerは「この映画はドイツの再統一の話としては奇妙だが、俳優にとっては非常に興味深いものであったはずだが」と皮肉を言った、とされています。う〜ん、勘違いにしてはちょっとなんか変な気がしますが・・・。彼女はこの映画に満足していないんでしょうか。残念です。

Special Thanks to: Katzさん。Chulpan Khamatova 情報をお寄せ頂きました。
この作品は2003年ベストヨーロッパ映画賞(嘆きの天使賞)を受賞!




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