(c) X Verleih AG

寒く暗く長いベルリンの冬。しかし2月はとっても熱く輝きます。というのもベルリン映画祭が毎年催されるからです。先日プログラムが発表され、どれを見ようかなと迷っている所です。
色々記事を読む中でとっても気になったのが、コンペ出品で金熊賞を争う作品の一つとして上がっているドイツ映画 『Good Bye Lenin!』
この映画の監督 Wolfgang Becker は『Das Leben ist eine Baustelle』(人生は工事現場)という映画も撮っています。 (実はこの映画のポスターを参考にこのHP“本日の工事中”マークを作りました。)工事現場の街ベルリンに住み、自らを工事中と思う私にぴったりの映画では無いですか!この映画を作った監督とはきっと通じ合える物がありそう、と勝手に思い込んだ私は今回のベルリン映画祭に出品の『Good Bye Lenin!』についての記事を読みあさった結果、これは面白いテーマ、展開だ、と思ったので紹介したいと思います。実際見れるのは2月9日か10日。その後13日から映画館公開となります。この記事を読んで興味をひかれたベルリン在の方、ぜひ御一緒しましょう〜!
右写真はポスター。配給はこの映画の監督、Wolfgang Becker の会社で“ラン・ローラ・ラン”も配給した X Film。


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時は1989年秋。壁崩壊の少し前、建国40周年の祝典に湧く、DDR(Deutsche Demokratische Republik ドイツ民主共和国/旧東独。> 夫の西側への逃亡後、かたくなに理想主義的な東独社会主義を主張する、意識の高い東独国民である2人の子どもの母 (Katrin Sass)。
彼女は心臓発作の後、昏睡に陥り資本主義の凱旋行進(社会主義国東独の崩壊)を寝過ごしてしまった。彼女が8ヶ月後奇跡的に目覚めた時には、彼女はまったく新しい国に目覚めたのだった。
彼女は、どのように西側の車やファーストフードチェーンが東を踏みにじり広がって行ったかも、社会主義国の数十年がただ洗い流されてしまったかも、ばたばたと一緒に発展し成長していこうとさせられたかも、すべて体験し知ることもなく眠っていた。
しかし目覚めた今、彼女にこれを知らせることはただでさえ弱っている心臓に負担がかかり危険だと医者は息子アレックス(Daniel Bruehl)に忠告する。

そして息子は、母をなんとかして東独の存続している状態に置いて看病するため、ベルリンのプラッテンバウ(東独によくある薄い壁の建築)の79qmの自宅に連れ帰り、この79qmの中に再びDDRを作ろうと四苦八苦するのだが・・・・・・。。


この映画の監督で共同脚本のWolfgang Becker や、息子を演じているDaniel Bruehlは西独出身。
息子役のDaniel Bruehlのインタビューなどでは必ずと言っていいほど『東独人を演じるために何か勉強しましたか』と質問されていました。
それくらいに西独と東独では人柄や動きなどが違う、と皆が思っているということなのでしょうね。確かに訛りというのは存在する気がしますが、私にはまだ西ドイツ人と東ドイツ人の見分けはつきません。大抵のドイツ人には区別がつくようですが(!!)。
そういった質問に対し、ケルン出身のDanielは、
『確かに初めはちょっと困惑した。僕は壁の崩壊の時は11歳で何もわからなかったし、家族のだれもこのことを実感してなかった。でも僕もアレックス(劇中役)も家族を大事にする人間で、そこのとこは同じだからね。』と答えています。
母を演じているKatrin Sassは東独出身。
『私はいつも自由に憧れてたわ。壁が倒れた時、これからはインターナショナルに活躍できる!と夢見て、映画の仕事を取ろうと頑張った。でも“黄金の西独のスターの法則”は“いつも若く、健康的で、スマートで美しく”だった。私はそれのどれも持ってなかったのよ。』彼女は新しい自由な国で、仕事をするのに非常に苦労したようです。

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ニュースを見たがる母に見せるため
DDRニュース
"Aktuelle Kamera"を
友だちに演じてもらう。


子どもにお金をやり、
FDJ(Freie Deutsche Jugend、
東独のボーイスカウトみたいなもの)
の歌を歌わせたり、
食べ物を東独容器に入れ替えたり・・。


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撮影場所となったHaus der Gesundheit
行きつけの目医者がココのビルに入っていますが、
今でも見た目はほとんど変化無し。。


この二人が壁崩壊後、ソニーセンター始め巨大な建築ラッシュとなったポツダマー広場に行って、 昔と比較し歴史を思う、という特集記事が新聞の日曜版に載っていたのですが、その1990年のポツダマー広場周辺の写真をみて今さらながらショックを受けました。 本当に何も無い!!真中に東独の旗が写るこの写真にはなかなか吃驚しました。現在のポツダマー広場はぴっかぴかの観光スポットですから。
壁崩壊から13年あまり。急激に進んだ開発と、追い付かなかった心の統一。 東独側に失業率が高いことや、国民に課せられた旧東独地域再建のための税金などから、東独と西独の心の溝は深まるばかりと言われて来ました。 しかし、こういった映画ができ、あらためてDDRとはなんだったのか、そこに起こったことは、 それを生きて来た人は何を感じて来たのか、ということを考える機会が増えていくことで、その溝は少しずつ埋まっているのでは無いかと思い、願いました。
*追記
2003年2月の上映から、国内、そして国外の賞を多数獲得、 フランスでは130万人もの観客動員数で、ドイツ映画で過去最高の記録を打ち立てました。 日本でも上映され、ヒットしたようです。(2007年3月追記)

Good Bye Lenin!: 公式HP




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