2006年ベルリン映画祭には、コンペ部門にドイツの映画がなんと4作品も入る等、『良いドイツ映画の当たり年』と言われていました。
そのコンペ出品作の1つで、ドイツの有名俳優がほとんど名を連ねるコメディ映画、『Elemantarteilchen(素粒子)』は、 今年の目玉商品のよう。 ドイツのコメディが、まったく理解できず、テレビにしろ、映画にしろ、心から笑えたことがほとんどない私は、 微妙に不安を感じながらもを見に行きました。
モリッツ・ブライブトロイが演じるブルーノは、性的に不満を抱える学校の先生。 奥さんと赤ちゃんが出て行ってしまい、お気に入りの学校の女の子に近寄ろうとするけれど、やんわり断られ・・ 何かいいことがあるかもしれない・・とヌーディストキャンプでバカンスをとろうと計画する。 ブルーノには、父違いの兄弟、ミヒャエル(クリスティアン・ウルメン)がいた。 分子生物学の学者で、世界的にも注目されている論文を書いている彼は、子供の頃から天才的な数学の才能をみせていたが、 今まで、ガールフレンドがいたことがない。しかし、5歳の頃からの幼なじみ、アナベル(フランカ・ポテンテ)と再会し・・
昨年、そのスキャンダラスな内容で、ドイツ中に論争を巻き起こしたというMichel Houellebecq の映画を原作にした映画。
結論から言ってしまいましょう。私は、きっぱり、駄作だと思います。

(c)Internationale Filmfestspiele Berlin


(c)Internationale Filmfestspiele Berlin

モリッツ・ブライブトロイ(日本でも大ヒットした『ラン・ローラ・ラン』のローラの情けない彼氏役で 一躍注目を集めた彼は、『Das Experiment(邦題はES)』、 『Knockin' on the heavens door』『Solino』『LUNA PAPA』等で好演。)、 フランカ・ポテンテ(『ラン・ローラ・ラン』の真っ赤な髪の毛の女の子ローラ、ハリウッドに行って『ボーン・アイデンティティー』等にも出演。)、 クリスティアン・ウルメン(もともとはMTVの司会とかをやっていた人。いかにもそこらに居そうなドイツ人顔。 この映画ではふけて見えるのですが、私と同い年だと知って驚きました。30才には見えない〜!)、 ニナ・ホス(2人のお母さんで、ヒッピー役)マルティナ・ゲデック(ブライブトロイの恋人役)のほか、 カメオ出演で、ヤスミン・タバタバイ(『bandits』等。ミュージシャンとしても有名。イラン人とドイツ人のハーフでエキゾチックな顔だちが印象的) 色々出てましたが、だから?って感じ。
映画が終わってから、プレス会見での最初の質問が『続編を作るのでしょうか?』・・えー・・・ちょっと間があってから、 『映画には合う長さというものがありますから、この映画はこれで終わりです』と返答。 原作はもっと内容が濃く、、Oskar Roehler監督によれば『この原作だけで20本の映画が作れてしまいますよ』 でも、この質問は、話が、よくわからないままだらだら続き、最後もなんとなく終わってしまったという感じだったことから浮かんだ質問では? と私は思いました。
何がやりたいかよくわからない映画なんですよね。いい俳優を使って、俳優を見せて、観客を魅せよう、というのならば、もっとじっくり俳優を追うカットがあっていいのでは? 俳優や女優が、この映画で、なにか新しい面を見せた、とか、見とれてしまう程きれいに見えた、とかいうこともありません。
スキャンダラスな内容で盛り上げたかったというなら、スキャンダルの深み、えぐさが足りない。 今時、裸がたくさん出てるくらいで・・。第一、個人的な感想ですが、ドイツの裸はどうも、健康的でさっぱりしているのでスキャンダルな感じに欠けるんですよね。 ドイツの東スポ?ゴシップを大々的に扱う新聞、B.Z.には、この映画について、さっそく派手な見出しをつけていました。 『モリッツ・ブライブトロイ、スウィンガークラブ(パートナーを交換するクラブ)に出現?!』・・ま、その程度のスキャンダルです。 『愛をテーマに』と監督は言ってたけれど、この2兄弟の愛、はどちらも表面的にしか書かれていない。
私は原作を読んでいないので、原作がどうなのかはわかりませんが、テレビに出ていた監督が 『原作はもっとネガティブな方向だけなんです。でも私はそれを明るく、ユーモアを交えて表現したかった』と言っていました。 うーん、もしかしたら、小説の魅力はそのネガティブなところだったのでは。ユーモアって、もっと深いものじゃないんでしょうか。 軽くて内容がなく、笑えないドイツのコメディ・・・・。好きな俳優さんも出てたので残念でした。

辛口採点かも知れませんが、自分がお金を払って映画館に行ってたら、かなり楽しめなくて、お金かえせ!という気分になりそうなので、 10点満点で2点。
(2006年、ベルリン映画祭観賞記より。批評はその時の気分と私の個人的な好みによるものです。ご了承下さい。
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