寒く暗く長いベルリンの冬。今年は例年になく寒い!こんな中見に行くなら青空暑い日射しを拝める“ナビィの恋”の監督の次作、“ホテル・ハイビスカス”しかない!というわけで見に行って参りました。
私はベルリンに来てから、フンボルト大学日本学の授業にもぐって“ナビィの恋”を見ました。この映画は4年前にベルリン映画祭に出品され、圧倒的な観客の支持を得、非常な話題作となりました。
授業の映画観賞後の意見交換では、たまたまそこにいた唯一の日本人であった私に『日本人は静かで感情的でないと聞いていたが?!』とか『何で日本語字幕がでているの?』などと質問の嵐。『やまとんちゅー(日本人)とうちなんちゅー(沖縄人)ってのは言葉も食べ物も文化も、そして人も、とても違うのだ』と説明するのは一苦労。実際沖縄に行ったことこそ無いけれど、小さい頃は波照間島の絵本を読み、沖縄料理屋に通い、「十九の春」をカラオケ持ち歌にしている私は沖縄の魅力をドイツ人に力説しました。
さて“ホテル・ハイビスカス”。今回は中江監督曰く『ずっと子どもと一緒に映画を撮りたかった』子どもが主演の映画。ベルリン映画祭でもキンダープログラムでの出品で、会場は子どもで沸き返っていました。
日本では2003年夏公開予定だそうですのであえて詳しく説明はしませんが、基地のある街、名護にあるインターナショナル家族(主人公仲宗根美恵子のお兄ちゃんは沖縄駐在だった黒人兵との子ども、お姉ちゃんはこれまた金髪、バーで働いてホテル家業を助けるお母ちゃん、ビリヤード場経営のお父ちゃん、おばあ)の経営する、お客さんのためには一部屋しかない(!)小さなホテル、ハイビスカス。そこに“長期滞在予定”の能登島君がころがりこんでくるところから話ははじまります。元気な末っ子の美恵子を中心に、お姉ちゃんのお父さんに会いにお母さんとお姉ちゃんがアメリカに行ったあと出稼ぎにでかけるお父ちゃん、御盆に御先祖様が帰って来たり、クラスメイトといっしょに“キジムナー(木の精)”を探しにいったり、沖縄時間が流れていきます。
出演:蔵下穂波、余貴美子、照屋政雄、平良とみ、ネスミス、亀島奈津樹、和田聡宏、大城美佐子、他。おばあ役の平良とみ、キジムナータンメー役の登川誠仁は“ナビィの恋”の主役の2人。大城美佐子は沖縄歌手の有名な人でこれまたナビィの恋にも出演していました。他、西田尚美、村上淳の“ナビィの恋”若手主役の2人もちょっと出て来ます。
会場はドイツ語の通訳、日本語小さく放送、英語字幕でしたが、『おならがプー!』と美恵子が映画の中で飛ばす度に会場は大笑い。その他、キジムナータンメーがひいていた台車に“BMW”と書いてあったのを見て笑っていたり、美恵子とクラスメイトが変な替え歌を歌っている所でも会場はわきにわいていました!
ホテル・ハイビスカス
公式HPはココ!
沖縄気分を味わいましょう




舞台で挨拶。
左から、太郎役:中江光太郎、

中江裕司監督、
主演/美恵子役:蔵下穂波

Q&Aの後に監督、穂波、光太郎そろってABCの歌を歌っているところ

さて上映後はベルリン映画祭に合わせてやってきた中江監督、主演の蔵下穂波、クラスメイト役で監督の息子である中江光太郎が舞台で挨拶。その後は場所を替えてQ&Aを行いました。
私は最初外に出てからインタビューを見に行ったので最初の方の質問を逃したのですが、ドイツ人の子どもは、とにかくがんがん手を上げて質問質問!他人の質問にはあまり注意を払っていないのか、なんどもくり返し『年はいくつ?』という質問が。
その他、『ホテル・ハイビスカスは実在なのか、もしあったら泊れるか?』監督:『これはセットですが、このホテルに似たホテルは沖縄にいくつか存在します』
『キンダープログラムでの賞を受賞したいですか?』監督:『もしできたらもちろん嬉しいけど、決めるのは皆さんですから』
『石をぶつけられたシーンで非常に上手に倒れていたけどどうやったのか?』太郎役の中江光太郎:『石は、紙と重り作ってあって柔らかいんです。倒れる所は、タイミングを何度も練習しました。』
『主人公美恵子はなんであんなに大声なんですか?』美恵子役の蔵下穂波:『あれが私の普通の声です』
ここで大笑い。
『日本の子どもはおとなしいと聞いていたのに、この映画では?!』監督:『確かに一般的な日本の子どもは行儀が良いですが、沖縄はちょっと違います。その中でも美恵子は、行儀が悪い、というか非常に子どもらしさを残した子どもです。』あれ?『犬と子どもはドイツ人にしつけさせろ』と言うくらいで、ドイツでは非常に子どもが静かでしつけられている印象でしたが、ドイツ人はまた違う印象を持っているんですね。まあでも私も、この映画を待っている間、恐ろしい数の子どもに囲まれ、開場するなり走って行く様子を見て、ちょっと見解が変わりましたが・・・(笑)
しかし美恵子役の蔵下穂波ちゃんは映画でみるよりほっそりとして、実に頭が切れそうな顔だち。また、監督の『彼女は撮影現場にいっさい脚本を持ち込みませんでした。何故なら、全てを暗記していたからです』という話で開場はどよめきました。
さて、子どもからの質問を締切り、大人からの質問をいくつか受けた時には『ナビィの恋を見て今回も来た、非常に面白い映画にお礼を言います』と口火を切る人も多かったです。
興味深かったのは『あなた達は何を信じていますか?』という質問でした。これに監督は『御先祖様』光太郎:『お地蔵さん』穂波『監督と同じ。御先祖様』と答え、ドイツ人は非常に興味をもったようでした。この質問は私自身も何度かされたことがあるのですが、その時私が『神様。でも神様というのはどこにでもいる神様で、例えばトイレにも、ゴミ箱にも、紙のスキマにも宿るんだよ』と言うと、すっごく面白そうに色々聞かれるのです。この映画の中でも“トイレの神様”がでてきますが、ああいった感覚というのはちょっとドイツ人にとっては想像しづらく、興味ひかれるものなのかもしれません。最後に監督、穂波、光太郎そろってABCの歌を歌って、また拍手が起こり、大盛り上がり。
すっかり沖縄な気持であったまって外に出ると外は零下!ああ沖縄行ってゴーヤチャンプルー食べてのんびり暮らしたいわ〜、と友だちとぶつくさいいつつ、コートの中に身を縮めながら帰途についたのでした。




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