寒く暗く長いベルリンの冬。しかし2月はとっても熱く輝きます。
というのもベルリン映画祭が毎年催されるからです。

今年は日本映画では“小津レトロスペクティブ”という100周年記念のプログラムで“東京物語”“麦秋”などが上映される他、“ナビィの恋”の“ホテル・ハイビスカス”“リング”の中田英夫監督の“ラストシーン”、山田洋二監督の“たそがれ清兵衛”、阪本順二監督の“ぼくんち”等の映画が上映されます。
今日はベルリン映画祭常連客であるSABU監督の“幸福の鐘”を見て来ました。
私はベルリンでこの監督の“MONDAY”を見ましたが、偶然と運命に翻弄される男の物語が軽快な音楽にのってアップテンポに展開されて楽しめました。
SABU監督は“弾丸ランナー”で監督・脚本デビューし、どの作品も走る、アップテンポなイメージがありましたが、今回は歩くスピードの映画。右写真はポスターですが、まさにこのイメージのように“裸足で歩く”感じです。話はやっぱり偶然と運命で動いて行くのですが、今回違ったのは、寺島聡演じる主人公は、偶然に起こる出来事に関わりはするけれど、最終的にそれに翻弄されることがなさそうなところ。
出演:寺島聡、西田尚美、鈴木清順、篠原涼子等。チケットが即日売り切れでもなかったので、空いているかと思っていて、会場に到着し、のんびり10分前までお茶など飲んでいたのですが、会場に行ってみるとぎゅうぎゅうの満席!SABU監督は人気なんでした。映画の後は大きな暖かい拍手に包まれました。

さて上映後はベルリン映画祭に合わせてやってきたSABU監督(左)が、挨拶とQ&Aを行いました。
ドイツ人からの質問は『私はこの映画をこう解釈したのだが、それで良いんでしょうか?』というものがいくつかあり、監督は、『いや、好きなように解釈してもらえればそれで良いんですよ』
『偶然が色々でてくるけれど主人公の人生に何も起こさないですが』という質問には『目にみえるものではなく、人としてひとまわり大きくなるんです。』
後、他の俳優の名前が全部でてから、タイトルロールで英語字幕に“鈴木清順”と大きく、インパクトを持って表示されたため、『有名な監督、鈴木清順監督の名前が見られたが、一体何が関係しているのか?彼は制作に関わっているのか?』おいおい・・・出演してたんですよ!(質問した人は顔を知らなかったんですね)SABU監督『死にかけのジジイがぴったりだと思ってお願いしました』。
『星空が映りますね、あの空に主人公は何をみたんでしょうか』SABU『自分の小ささをみたと思います』。
最後の質問を会場から募集した時『“ヤクハ”って先ほどからよく出てくるんですが、何ですか、説明して下さい』この質問にはさすがに会場中がずっこけていました。今やYAKUZAは世界語ですが、知らない人もいますよね。SABU監督『えーー・・・・恐い人です』会場はまたどっと受け、楽しい雰囲気のうちに幕となりました。
この作品は2003年NETPAC賞(The Network for the Promotion of Asian)を受賞!




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