ベルリンも新首都となってから15年。 その前は東ドイツの首都ではあったわけですが、西側はボンを首都としていて、 政府機能はほとんどボンに集中しており、壁崩壊後ボンに家を持っている政治家達を一斉にベルリンに呼び寄せるため、 かなりのお金が支払われたそうです。 今でこそベルリンに住むのは楽しいかも知れないけれど、カオス状態だった統一したての頃、 家を移すのに躊躇した人の気持ちはよくわかります・・。 未だに、首都、例えばパリや東京みたいな街と比べるとまだまだ田舎の趣き有りのベルリンですが、 その前、1945年までもドイツの首都、華やかな時代があったのです。
そんな古き良きベルリンにタイムスリップ?ダンスホールが先日再オープンしました。
Claerchens Ballhaus (クレアちゃんのダンスホール)は1913年開店の超老舗。 当時は最先端のクールな場所だったのでしょうが、昨年末に閉店する直前には、 ぽつりぽつりと昔からの常連さんが現れるくらいだったとか。 前を通りかかる度、スポットライトはこうこうと明るいながら、人が居る雰囲気が無く、 この店は開いているのかな?と不思議に思っていました。
そして今回の再開店!閉店後、一度は看板なども取外されましたが、前のオーナーから新しくこの店を買取り、 今年1月に再オープンさせた現オーナーは新しいコンセプトを立てながらも、 インテリアはそのままほとんど手を加えないで残し、あえてオールディーズな雰囲気を生かしています。 節約して逆に洒落た感じも。賢い!

古い看板の残る店。
上の階は何十年ぶりに開かれた
一見の価値有りの
ゴチックな空間



そして今回の再オープンに際し、ずっと何十年も閉められ、 そのまま放っておかれていたダンスホールの上の階がオープン。
下の階は、ラメがキラキラ、ミラーボールもキラキラ、タイル張りの暖炉、赤いライト・・ いわゆるデスコな雰囲気を残していますが、上の階はもう、お城のダンスホール。 6メートルくらいはありそうな高い天井まで届くデコラティブな鏡、彫刻を施された柱、バースペースにガラスのシャンデリア。 床はダンスホールらしく、滑りのよい滑らかな素材でできています。 歩くとカン、カン、と良い音が。ダンス靴を履いてステップを決めたら素敵な音がしそう。
こんな場所が放っとかれていたなんて、これだからベルリンは面白い! 前のオーナーは、店鋪を拡大すると面倒、お金がかかる等の理由から閉めていたそうで、 そのおかげで(?)今まで保存されていたこの場所はホント一見の価値有りです。
新オーナーはさっそくこの空間をオープンし、昼間は見学ツアー、夜はクラブに・・としっかり商売。 のちのち、レストランにしたい・・等、計画もあるようですが、レストランは簡単には開けません。 まずは良いコック、サービス、料理の値段を考えて、考える事は沢山あります。しかしクラブなら、簡単。
ベルリンでは、中間使用と呼ばれる、工場跡地等を潰して新しい建物を立てる、 もしくは大規模な改装を行う前の期間、安く借りて何かする、という事が非常に多い街です。 その理由としては、まず、街にお金がないので、廃虚を潰す、まずその工事費が無い、工事費はあっても跡地が売れない等。 色々な理由から廃虚が放っておかれている事にあります。 で、廃虚としてほったらかしておくよりは、安くても誰かが借りて、その間の管理をしてくれる方が有り難いと、非常に安く貸し出されるのです。

その中間使用を非常に多く利用しているのが、クラブ。 今や老舗エレクトロクラブとなったWMFはもともとWMF食器工場の跡地を使っていた所からその名前が来ています。
ベルリンでクラブを開くのにあまりお金はかかりません。巨大なアンプが2つもあればOK。 後はお酒を売るバースペースは適当な木を使って作り、ライトをセッティングすれば出来上がり。 蚤の市で格安だったボロボロのソファーでも置いて、後はビールのケースでも並べて上に板をしいたら簡易ベンチに。
かなり暗いので誰1人としてソファーが汚いなんて事気にしませんし、 かかっている音楽が良くて、雰囲気が楽しければ何でも良し。 バーキーパーが2人も入れば、ウェイターも、キッチンも要らない。 元手も準備もあまりかからないし、改装工事もいらないわけです。 だから、このダンスホールも、取りあえずはクラブとしてオープンさせておいて、 知名度をじわじわ上げて浸透させながら、準備をし、いつかレストランにするつもりなのかと思われます。 もちろんクラブだけでも良いのでしょうが、夜だけだと、せっかくのインテリアが見れなくて残念ではあります。 この場所、床だったらソシアルダンスが本当は似合いそうですが、ソシアルダンスのクラブを毎週オープンしても 人、なかなか集まらないかなあ。残念です。

映画の撮影等にも
オファーがあるとか。
ファッションショー等も良いかも。


2階から下の入口を見下ろす
週末はケーキを並べて
オープンカフェみたいに。
さて、1階の旧ダンスホールは、カフェになっていて、 天気がよければ外に作られたテラスでお茶もできます。 一応窯があってそこで石焼きピザを焼いているのですが、味はイマイチ。 注文しているお客もあまりいませんでした。
夜9時以降から、昔の常連客を目当てとしたプログラムが開かれます。 その後深夜1時以降からは、上の階、下の階で若者を中心としたクラブナイトに。
なんと上は80歳!まで、という常連客達は、深夜1時くらいにはぼちぼち家路につく。 若者は夜1時までは家を出ない。このタイムスケジュールを上手く使ったプログラム設定。 もちろん、残ってクラブナイトに参加する70歳の方も、夕方から独特のムードを見にやって来る若者も。このミックスされた客層がまた良い感じ。
ベルリン、特にプレンツラウアーベルク、ミッテ周辺の夜遊びは、どうも客層が狭い印象があったのですが、 ここの出現でまた面白くなってくるかも知れません。 70歳でダンスホールでがんがん踊っても、イイじゃ無いですか。 老人だから家に居ろなんて不公平。踊る元気があるならいくつだってダンスホールをひとりじめも悪く無いと思います♪
しかしまあ、私自身は30にもなってないのに、もう夜遊びは次の日体にこたえるから・・なんて言って、 パーティに全然顔を出さないので 周りのタフなドイツ人達に怒られていますが。 語学学校の時思ったんですが、ヨーロッパ人はタフ!朝4時とかまで飲みあかして遊んでても9時の授業にちゃーんと顔を出してて、 やっぱり体の作りが違うのかなあ・・・とつくづく思います。

*付足
このダンスホールの2階の鏡の間、現在は大金をとって貸し出すようになりました。 ベルリン・ビエンナーレ(映画祭ではなく、美術展)でもパフォーマンス会場として使われたり、ファッション撮影などにも多く使われています。 もちろんイベントにも。ここだけでなく、ベルリン市内には4カ所のバルハウスがオープンしています。中身は劇場だったり、レストランだったり色々ですが。(2007年、5月筆)




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