この時期、ベルリンを歩くと、パーンッという爆発音とこげたような匂いがします。これは、大晦日に向けて盛大に売り出される花火。
こっちの大晦日は、日本の新年のように、家族のお祝、というより個人宅のパーティがやたらあってシャンパンをがぶ飲み、とにかくどんちゃん騒ぎをするものなんですがその騒ぎの主役がロケット花火と爆竹。その量ははんぱではなくすごくて近所の駅や通りは、まるで戦争のあとみたいに火薬の匂いが充満し、爆竹のかすとロケット花火と酒ビンが散乱して歩くのも大変なくらいです。こんなに騒いでいるのでもちろん警察はたくさんいますが警察も新年のさいには、先頭をきって爆竹を投げたりしてて、ちょっと笑ってしまいます。ああベルリンだなあ・・・という感じで。救急車や消防車もひっきりなしに通りますし、駅構内のゴミ箱が爆発したり・・ちょっと身の危険も感じます。

新年をブランデンブルク門の前で過ごして帰ってきた時には、薫製のような匂いが身体中からするくらい、街は煙りだらけなのです!


大晦日のブランデンブルク門周辺。
地面はびっしり花火のカスが
でも日本人にとっては花火って“夏の風物詩”ですよね。ドイツの夏はあまりに明るくて、ちょっと暑さがひいてきた夕方に縁側でやる、なんて風にはならないくらい、夜10時でもまだうすら明るいのですが、逆に冬は夜4時くらいにとっぷりと暗くなってきますので、花火向きの季節とされるのではないかと思っています。
クリスマスに静かに家族の集まりをすごして帰って来たベルリーナー達は、大晦日に友達達とばか騒ぎをし、爆裂音に耳を痛くし、ロケットを飛ばし、一瞬の光りを楽しみたいのかもしれません。クリスマス時期のお休みと違って、大晦日にばか騒ぎして、元旦を休んだ後、二日くらいから少しずつ通常業務に戻る街ですが、今年は二日が金曜日なのでまとめてクリスマスから長めのお休みを取っている商店等が多い様です。

さて、ひとくちに花火といっても、日本にあるような、趣向を凝らした様々な色合い、火花の花火があるわけではありません。白い、シンプルな線香花火にも似た光が数秒続く、Wunderkerzenと呼ばれるもの、ロケット花火、そして爆竹がメインの3つです。ロケット花火は“人に向けてはいけません”と日本ではきつく言い渡されていたと思うのですが、こちらでは、そこら中からロケットが飛んで来ておちおち歩いてもいられないくらいです。
さて、このWunderkerzenと呼ばれるものは、細い針金に火薬をねった灰色のものを二回つけて戸外で乾かしたもの。火花こそ線香花火に似ていますが、素材が鉄で、いかにもドイツ・・・。あのはかなく、ポトン、と落ちる線香花火の切ないような光とは正反対で、最後までパチパチと光を放ち、鉄のカスが残ります。
線香花火がやっぱりイイよね、と言いながらも、ドイツの鉄花火に火を付け、今年の年末もふけてゆくのでした・・・。




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