IKEA製の家具を持っている人が多いのには理由があります。
安いこと、そして色、素材、形等シンプルかつちょっと今風で合わせ易いこと。直線で切った板を自分で好きなように組み合わせることができるのも、日曜大工好きのドイツ人には嬉しい所かもしれません。そしてIKEAではなんらかの安い素材（変な形だったり、大きさだったり、今あまり人気のない素材だったりで安くなっているもの）をデザイナーのちょっとしたアイディアで“ちょっと”良い家具にリニューアルするのが上手です。デザイナーズものといっても、極端にお洒落でクールなデザインを狙うのでは無く、シンプルに。過剰な飾りもつけないデザインは引越して来たばかりの白いからっぽの部屋から、ごちゃごちゃの部屋まで目立たずしっくりと馴染みます。
また、今回のテンぺルホーフ支店の広告でもわかるように人目をひき話題となる宣伝が上手です。ちなみに今回のベルリン新支店の広告では“ベルリン、秘密のスウェーデンの首都”を打ち出しベルリンっぽいモノ（例えばニナ・ハーゲン、トルコ人の家族、国会議事堂）をわざとらしくスウェーデンっぽくコラージュしています。
そんな広告にあおられるように行ったIKEAにはフライパンから植木まで総合的に揃っていて、家具を見るつもりだったのが気がつくとカートの中には関係ない物が沢山・・・なんてことも。ただし、安価にするために、一番安くできる方法で作っているのでガラス製品は非常に割れやすいなどの問題点もあります。そして私にとって大きな問題点はどのIKEAも郊外にあるので車が無いと大きな家具を持って帰りにくいということです。しかし、１００ユーロからは家への運送も無料。新居に引越して沢山モノが必要ならこのサービスは大変便利です！

かゆいところに手が届くIKEAでちょっと異色の存在で私が気になっているのがスウェーデン製の食べ物類。
シナモンクッキーやグミ、鰯の酢漬けなどもありますが、私がIKEAに来たら必ず買うのがクネッケ。スウェーデン語ではクネッケブレードと言うこれは100％のライ麦粉か全粒粉で作ったパン生地を薄く焼いて作る乾パンの一種です。もちろんドイツのスーパーでもWASAというスウェーデンの会社のクネッケ等が売っていますが、この３０ｃｍはあろうかという丸形のクネッケはIKEAでしかまだ見た事がありません。もちろんスウェーデン直輸入！それにのっけて食べるチューブ入りのキャビアも売っています。
しかしこの丸い形、まん中に穴が開いていてその色といい、形といい、舌触りといい、巨大な電動やすりにそっくり。この形はその昔、虫やねずみ、かびを避けて保存するのに棒にかけていたのが残っているのだそうです。電動やすりを食べた事はありませんがこのクネッケ、表面にまで麦の粒子が出て来ていて、ごわごわ！そのザラザラした上にのっけたものの味がからんで美味しいのですが、それだけだと胃が削れてしまいそうです。
“クネッケ”の語源は食べた時の音が語源だといいますが、ほんとうに『バリリッ』『ガリッ』『ボリボリ』という音が。他の製品は『パリッ』『サクッ』という軽い音ですがこの直輸入クネッケは固いだけで無くぎっしりと粉の栄養が詰まっている重たい手ごたえ。もちろん丸のままだと食べにくいので最初に割って食べるのですが、チーズ等をのせて食べるとチーズのほろ苦さとライ麦の力強い味が口の中に広がります。
このクネッケの伝統をいかした形、簡素な味わいと安い値段（1,9ユーロ！）私にはまさにIKEAのコンセプトのように思えるのでした。
＊付足
いよいよ日本にもイケア、進出したようですね！ 私は家具は本棚以外は買わなくなりましたが、意外に良いのが子ども用品。 クネッケの他には、シンプルな塩味だけのポテトチップスと、固めで美味しいグミをチェックするようになりました。 白樺のジュースとか、よくわからないものも購入したりします。(2007年、５月筆)