昨年の夏からベルリンは異常気象、今年の冬もつい最近までそれほど寒くなく、普通に自転車を乗り回していたのですが、先週あたりから急に雪、マイナスの日が続き、駅前に止めておいた自転車の鍵が凍ってしまいました。
そんなわけで、今は毎日のようにU-Bahn、S-Bahnを使っています。 そこで今回は、ずっと気になっていた、電車の柄(?)について書いてみようと思い立ちました。 (ここで、私が電車の柄、と言っているのは、座席シートの布のモチーフ、もしくは壁についている柄を指します。)
ちなみにこの模様は、よく、座席にスプレーでやられている落書きが目立たないようにするためにデザインされているそうで、 遠目にグレーに見える、迷彩状の、細かい色違いの小さなモチーフが組み合わされているものが主流。ベルリンに長くいるとあまり気にならないのですが、 ベルリンの電車には落書きが多く目に止まります。
座席の上の落書きの他、窓ガラスをコインや鍵のようなもので削って文字を書いたり、 郵便局の小包用宛名シール(無料で大量に手に入るのと、空白部分が多いので頻用されている)を貼ってその上からマジックで書いたり・・・。 一応やっている所を見つかると罰金なのですが、一向に減る様子はありません。落書きを防ぐことができないのならば、目立たせないようにする努力をするしかない、 というわけでこういったデザインが多く採用されるわけです。

ブランデンブルク門、
赤の市庁舎
テレビ塔、
ベルリン大聖堂。
ベルリンの名所を記号化し
ちりばめた柄は
Ring Bahn(環状線)使用。


U2線


S-Bahn Ring線


Tram(市電)、U8

さて、それらの模様にはどんなものがあるのか、みてみました。私が一番よく見かけるのが、左写真のピンクグレーの地に赤、黒、青の迷彩(すごい取り合わせですね・・)のU2番線(左写真)。BVG(ベルリン鉄道)によれば、どの柄にも必ず、その線のロゴ色が取り入れられているそうですが、U2だったら赤?
車内は木目調の壁紙が貼られていたりします。それからRing Bahn(環状線)のシート(中写真)。これは迷彩というか、紫グレーの地にリボン状の赤、黒、青、白色が。この線は落書きが多い線ですが、このシートの上では、黒いスプレーも、銀色のスプレーも、まったく目立ちません。そういう意味では成功しているデザインと言えるかも。車内には、上写真のようなベルリン名所の柄が施されています。
そして、市電やU8線で最近よくみかける、段差がなく車両の仕切りも無い、新デザインの車両で使われているグレートーンのモザイクの地に黄色、水色、赤の水玉が散っている柄(右写真)。これは、他の2種がビニール素材なのに対し、フェルトのような毛羽立った布で、汚れやすそうですが、色がもともと発色がよくないので、すり減ってもあまり気になりません。とにかく、素敵なデザイン、というよりは、できる限り長く使用でき、かつ汚れが気にならないので清掃の必要もあまりない、実用的であることがこれらのデザインにおいて重要視されているのではないでしょうか。

しかし、そんな実用オンリーのデザインを素敵!と思いその布で洋服を作ってみよう!と思う希有なデザイナーもいます・・・。
ベルリン交通百周年記念祭にあわせ、デザイナー、ギゼラ・ゼッペラーさんは、20年間ベルリンのバスに使われて来た赤いチェックの座席シート用の布を使った帽子、 ジャケット、ワンピース、バッグ、スリッパなどを考案。85%綿のこの素材は分厚く、縫い合わせるのに特殊な機械が必要だそうですが、 仕上がりはとても暖かく、上質なのだとか。 シャネルスタイルのスーツのお値段は450ユーロ。しかし、これを着てバスに座ったら、まったく同化しているわけですよね。 ちょっと勇気がいるかも。せいぜい、家用のスリッパを履くくらいがイイかも知れません。




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