ベルリンの今年の夏は冷夏。昨年は暑くて暑くて、毎日素麺を食べ続けたいくらいの天気でしたが、今年は少々ボリュームのあるモノを食べたくなるくらい。夏バテとはまったく縁の無い天気が続いています。
ところで私は、今年に入ってからお菓子(グミ)断ちを決意し、徐々に食生活に気をつけ出しました。先日、炭水化物を抜いて、肉/野菜をたっぷり食べる、という食事療法に挑戦し、砂糖漬けのドイツ脂肪を少し減らす事に成功。脂身たっぷりの肉でなければ、胃に負担もかからずに体に力が湧いてくる事を発見した(今頃?)私は、鶏肉をよく食べるようになっています。
そんな私が今はまっているのが、“Henne”(雌鶏、の意)というレストラン。牛乳だけで育てた特別な鶏をこんがりと焼き上げただけの料理、その1品だけを出すこのお店、その鶏への自信の程が伺えます。

コンガリと焼き上がったトリ。
一回に焼き上がるのは20羽程で
その後来るまで少々時間がかかる。
お腹が減っていたら
来店してすぐ“トリ!”と注文。

このお店は、夜は7時きっかりに店のシャッターを開けて開店するのですが、店の前には5分前程から人が並んで待っています。その古いドイツの居酒屋っぽい雰囲気を残す入口を入ると、中もこれまた古めかしい、煮染めたような色合い。机も椅子も使い込まれた肌触りで、とてもくつろぎます。ここのインテリアはなんと1907年から現在まで残る歴史あるもの。花瓶にいけてある花やチェックのテーブルクロス、座っているお客のお爺ちゃんお婆ちゃんまでが渾然一体となってこのレストラン独特の空間を作り上げています。
お客はベルリン在住の常連客の他、ベルリンに仕事で来る時は必ずココで食事をする、なんていうベルリン外からの常連も。ベルリン名物/ドイツ名物を味わいたい観光客ももちろん足を運びます。
そう、ここで出されている“鶏の丸焼き、2分の1羽”というのはベルリンのインビススタンド、日本で言えば駅の立ち食い蕎麦屋、おでんの屋台等と比べられるような軽食がつまめるちょっとした店ですが、そういう所で出されている、ベルリンではお馴染みの食べ物なのです。
フランス等でもこの鶏がグルグルと回って丸焼きにされている様子は見られるそうなので、ベルリン名物と言えるかどうかはわかりませんが。

さて、注文します。メニューをもらうまでも無く、メニューにはこの“ミルク飼育鶏の丸焼き2分の1羽”とキャベツのサラダ、ポテトサラダ、後はソーセージ等があるだけです。迷わず、“鶏!”と注文します。飲み物はベルリン産のビールを飲んでも良いですが、飲めない私はアルコールフリーの麦芽飲料を注文します。見た目がビールっぽいこの飲み物があるといかにもドイツ風なのが楽しいので。
酸味のあるキャベツサラダ(ザワークラウトではありません)をつまみながら待っていると、ちょうど食べ終わった頃に、目の前にこんがりとキツネ色の鶏肉がドーン!と現れます。このこんがり具合、油っぽい?と思うかも知れませんが、驚く程カリカリッとしていているうえ、熱々なので気になりません。フォークを使うのももどかしく、手を使ってもぎ取ると、その鶏皮がサクッ、中からジューシーな肉が現れます。うーん、むむむ。しばし無言、パリパリ、ポリポリ、と香ばしい皮を噛む音だけが・・・。
もも、手羽、お腹、ありとあらゆる所の肉、鶏皮が食べ尽くされていきます。背骨にもかぶりついてしまいましょう。食べ終わった後は指がペトペトしますが、その油は、パンを食べていると自然にきれいになります。パンにもちょっと油が染みて味がつきますし、一石二鳥。日本にもある大手フライドチキンチェーンがベルリンに進出できない理由がここに有り!こんなボリュームたっぷりで美味しい鶏がたった6ユーロなのですから。
夏の間は、1907年インテリアの店内ではなく、木陰のテラスも素敵。ベルリンの夏気分を楽しめる手づかみで美味しいお店なのでした。


----------------------------- guten Appetit! ------------------------------



Henne: Leuschnerdamm 25 地下鉄U1/8線 Kottbusser Tor 駅 徒歩10分
Tel: 030 6147730 (週末要予約)




画像、文章の無断転載を固く禁じます
All Rights Reserved, Copyright(c) by Hideko Kawachi