長い帽子をかぶり尖ったわし鼻の魔法使いが、憮然とバケツの前で芋を向いているところ
That's ドイツ!?
ドイツの傑作童話
『大泥棒ホッツェンプロッツ』より。
偉大な悪い魔法使い、
ペトロジリウス・ツヴァッケルマンが
魔法の城の台所で
ジャガイモの皮むきをしている所。。
彼はゴミから
金を作り出すこともできるのに、
何故か芋の皮は
魔法で剥けないので、
しょうがなく
芋を自分でむいています。


皆さんはドイツの食べ物、といったら何を思い浮かべますか?
ビールとソーセージとじゃがいも!というのがやはり一般的な、典型的ドイツ食のイメージらしく ガイドブックにはそういった料理が多く紹介されていますが、ベルリンなどの都市では各国料理をそれなりに楽しめますし、ベジタリアンの人も非常に多くみかけます。
こちらの若者向けのBasic Cooking なる本で、魚料理の項に寿司が載っているくらい、ドイツの食も今は多様化していると思われます。
ドイツ人といえどももちろん一様ではなく、家庭によって食べるものも食べ方も違うでしょうが、一般的に朝はパンと数種類のジャム、ヨーグルトやクワーク、卵、昼が暖かく、ボリュームのあるものを食べ、夜はKaltes Essen(冷たい食事)といって、パンにチーズ、ハムなどの簡単なものを食べます。ドイツ人の夫だと仕事から帰って来て夕食の仕度が簡単、とよく耳にします。


さてそんなドイツのオフクロの味とは??
土地が肥沃ではないドイツでは、昔ながらのおふくろの味というとやはり、 自分の畑を使ったジャガイモ料理、 貴重な家畜を余さず使えるソーセージや豆のスープ、そしてチーズ、バター、ミルクといったもののようです。

   50〜60年代始めにライン川近くの山地地方(ケルン、ボン辺り)で、社会民主党(現首相の政党)から配られた、「“過去に学び、未来を理解するための”おばあちゃんの知恵&レシピブック」には、そんなおふくろの味が満載!(政党がレシピ本を自分達で試作してから出版するなんて、 さすが投票率が高く、政治の話題が好きなドイツっぽさを感じたのでピックアップしてみました。料理の他にも、野菜クズ使用の掃除法など倹約のトリック等も沢山、イラストもレトロで、楽しめる本です。)
例えば、屠殺をした日のごちそう、というページにはザワーブラーテンという、肉をマリネ液につけた後にこんがり焼きあげる料理にジャガイモだんごを添え、新鮮な血を使った血のソーセージなどが紹介されています。今は牛肉で作られるこの料理は、昔は馬肉で、肉の臭みを消すためにマリネしたとのこと。
この血のソーセージは、貧血に効くといわれ、私も食べたことがありますが、柔らかい状態で出されることが多いので、想像を働かせれば気持悪いけれど、まずくはないです。


ちょんぎられた牛の首を中心に、皮を剥がれ、切り身にされた牛が壁にかけられ、机に置かれている所
レシピブックに載せるには
少々グロテスクすぎでは・・・
ドイツ(欧米全体がそうですが)って
肉食だなあとしみじみ思う
“屠殺祭り”の項のイラスト


この巨大な球体が
ジャガイモだんご??
がたいの良いお母さん(?)
の顔が恐く
「悪戯すると食べちゃうわよ!」
とか言ってそうです。

上図でお母さんが持っている巨大なジャガイモだんごは Knoedel とも言い(普通はこんな巨大じゃないです)ドイツでは色々な料理に添えられています。 その他よく添えられているのはマッシュポテト(日本のものよりかなりゆるい感じ)やキャベツを醗酵させたザワークラウト、ジャガイモ炒めなど。ドイツにはジャガイモの種類が160近くもあるそうで、料理によって使う種類を変えます。ほくほくのものは粉ふきいも、ねっとり系はだんごに、固めは炒めものに・・・。

しかし最近ドイツのおふくろの味事情も変わってきているようで、このジャガイモだんごやマッシュポテトが簡単にできる、 いわゆるインスタント食品がスーパーに並んでいます。 意外なことですが、実はドイツはインスタント料理大国!!スーパーのコーナーの充実を見てもそれがわかるかと思います(右写真)。 売れ筋は日本でもお馴染みのマギーとクノール。このほか、冷凍コーナーも充実!
料理に手間をかけない風潮は、ドイツ人の異常なキッチン磨きへの情熱からとも、 (あるインスタント食品のCMで、鍋がよごれない!と宣伝しているのを見て味もさることながら、汚れないという所に重点が置かれているのだな、としみじみ。) もちろん、働く女性が増えたからとも言われていますが、真相はどうなのでしょうか?
ドイツのスーパーの様子。数mの棚にずらりとインスタント食品がならぶ。 

鍋の頭の奥さん、牛の頭のお父さん、キャベツ頭の子どもが手をとりあっている絵

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“過去に学び、未来を理解するための”おばあちゃんの知恵&レシピブック提供:Marlis Engelberth
大泥棒ホッツェンプロッツ:Otfried Preussler




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