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私が初めてこの袋の存在を知ったのは、ドイツの童話作家、エーリッヒ・ケストナーの伝記的作品
“わたしが子どもだったころ”でした。
日本語版が手元に無いので間違えているかもしれませんが、確か『三角袋』と表記されていたように記憶しています。 ケストナーはお母さんがぎっしり砂糖菓子を詰めてくれた自分の背丈よりも大きいくらいのこの三角袋が誇らしくてたまらなかったのだけれど、 帰宅時に、先の尖った部分が破けてしまい、中身が全部こぼれ、砂糖菓子に埋まって悲しい思いをしてしまうんです。(確か) 読みながら、新学期に持って行くお菓子の一杯詰まった袋って何だろう?学校にお菓子を持っていっても良いのかな? なんだかでも美味しそうだな〜。しかしなんで袋が三角?と色々想像しながら読み進めました。 挿し絵もあったんですが、実物を知らなかったらこれじゃわかりませんよね。 でも、逆に、分らないからこそ、外国の童話に出て来る食べ物は常に食欲をそそるもの。 ちょっと話がずれますが、先日あるエッセーで『“生姜パン”って何だろう、と思って試してみた』というを読んで、ああ、やっぱり皆同じように感じているんだ〜と嬉しくなりました。 今では、普通のスーパーにも海外のお菓子を並べていますし、レストランやカフェでは海外より美味しい洋風ケーキなんかを食べる事ができます。 でも、一昔前には、多分翻訳者自身、その食べ物を食べた事がなかったりして、翻訳に苦心しながら、ああでもない、こうでもない、と訳したのでしょう。 ちなみに、生姜パンはジンジャーブレッド、ちょっとピリッと生姜の味がきいたソフトクッキー。 生姜パンというから私もパンみたいなふわっとしたものを想像していました。 後、同じくケストナーの“サーカスの小人”には、美女の曲芸師が出て来るのですが、その彼女は“マルチパンのように甘い(美味しい、だったか?)”とどこかに書いてあって、 マルチパンって?3色パンみたいなもの(マルチだから)?と当時は考えていたのですが、 ドイツに来てマジパン(アーモンドペーストを甘く練った物)をMarzipanと書くと知った時始めてこの謎が解けたのです。 ・・・童話に出て来る食べ物の話になると止まりません。何しろ食い意地がはっているもので、食べ物の話は異常に詳しく覚えております。 |
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ケストナーの話でも、その三角袋の大きさ、いかにぎっしりお菓子が詰まっているか、という事を通して
お母さんの愛情を描いていたと思うのですが、それはケストナーの時代も今も、あまり変わっていないようです。
もちろん今は、お菓子が最初から入った詰め合わせセットなんかも売っているので、昔程気合いは入っていないのかもしれませんが。 店で売っているものは、漫画風の絵やファンシーな柄をプリントした物が多いのですが、イマイチ可愛くありません。 無地にリボンを巻いたりした方がよっぽどセンスが良いのに・・と個人的には思っています。 手作りの物は立体的なモチーフをつけたり名前を書いたり、その子どもだけのオリジナルデザインにするため、頑張ったな、という感じが伝わってきます。 祖父母に作ってもらったり、親からの物にプラスしてさらに親戚等からもらっている場合もあるようです。新学期そうそうお菓子三昧! 何にしろ、人生に一度しかない初登校日の、不安と嬉しさが入り交じったような気持ちに、お菓子を学校に持って行ける嬉しさ。 ドイツ人の思い出に根ざす食べ物、パッケージなのでした。 |