東京では桜開花宣言?という話もあるくらいなのに、まだ肌寒いベルリンです。うちはとても暖かく、西側に広く開いた大きな窓から朝から光が射し込んでくるので毎朝『今日こそ春!』と思い、ついうっかり薄着をして外出し、ぶるぶる震えて帰って来るという毎日。朝天気予報を見ると、天気予報の人は『今日は春らしいです!』と言うのですが、その“春”の観念がまず多分私の考える“春”と違うのでしょう、肩透かしを食わされます。
さて先日、カーディガンを羽織ってブーツにレースのタイツという薄着で外出、途中で歯を食いしばる程寒くなってしまい、数メートルごとに入れるお店には全て入ってひざこぞうをごしごしこすって暖めながら、駅までの長い道のりを歩いていた時のことです。もう寒さも限界、走って行けば駅までは数分、でも走れば寒いし、ゆっくり歩くのもまた寒い、ここでひとふんばり?と思った時に、小さな看板が目に入ったのです。
つい先月か、オープニングパーティの前日にたまたま通りかかり、チェックしていたこぢんまり、ほっくりあったかい店構えのチョコレート屋さん。
そこには、まさに、私のような凍えた人にぴったりのスナックが売られていたのでした!

ふるえて言葉がうまく出ない私の顔を見て、店員さんがにっこり笑って、『スペインのココアがオススメです!』
スペイン?『絶対美味しいですから。』ともう一押し。ベルリンには珍しい柔らかい笑顔に心暖まって、さっそくそれを頼んでみると、やって来たのは、濃い香りを持ち舌にねっとりとからみつく、まるでチョコレートそのものを溶かしたような物体でした。実はあまりチョコレートが好きでないので、一瞬うっ、と思いましたが、案外甘味は少なく、とろりとしているのは、喉にざらつくチョコの粘りではなく、粉系のもったりしたとろり。それを、飲むのではなく、木のスプーンですくいながら食べると、舌に微妙に木目の隙間の味(?)が伝わります。隙間の味というのも変ですが、隙間に入ったチョコを舌が吸い取ろうと頑張っているのがわかります。木の部分が分厚いので口にほおばる感じ。スプーンをくわえてぼーっとしていると熱々の揚げ立てチュロスが出て来ました。
コレにつけて食べるのがスペイン流。スペインに居た事のある人に聞いた所、このどろりココア+チュロスは、夜通し遊んだ後の朝、もう家に帰る元気無し、くたくた〜って時に注文してがっつり喉に流し込むと、さっきまで足も上がらなかったのがしゃきっとする、そんな食べ方をする食べ物なのだそう。そういえば、バルセロナに行った時、朝からチョコがけのチュロスに砂糖かけて食べてる人がいて驚いたのを思いだしました。そういうことだったんですね・・。
半分も食べると、体の芯からぽかぽかと暖まり、よーし、帰るか!という気力が湧いて来ました。

しかしせっかくのココアを半分も残すのは悪いので、ゆっくり座って、終わりまで食べることにしました。しかし、胃の中にはどっしりとチョコが・・。取りあえず運動、というわけで小さい店内を歩き回ります。この店は、カフェではなく、チョコの専門店のようです。チョコレート色の棚に、様々なチョコがディスプレイされていました。ベルリンのチョコもありましたが、スペインのチョコや、チョコリキュール等も。パッケージがステキなモノが多く、ちょっとしたプレゼントとかにいい感じでした。
レジの横にはライトボックスが飾られ、小さな展示空間に。
食べられるモノを作品にした展示だったら面白そう。ちょっと展示空間としても気になって、チェック。天井が斜になっててインスタレーションは簡単じゃなさそうだし、ライトボックスもうまく取り入れないと邪魔になってしまうけれど、小さいものをごちゃごちゃ置くような展示だったら面白そう。でも逆に店がこれだけ主張のある店だと難しいかな・・と思ったり。
色々考えながら食べていたら、すっかりチョコは無くなってしまいました。お腹はぱんぱんでとてもチュロスの入る余地が無くなってしまったので、手に持って、店を出ました。子ども連れのお父さんお母さんがひっきりなしに来るので店が狭くなってしまったということもあります。ココはどうやら、子連れさんのオアシスのようでした。近所にいくつか子ども用品店があるので、その帰りなのかもしれません。
しかし、あんなお腹に重たいものをまだ乳母車に乗っているような子達に食べさせて大丈夫なのかしらん。でもドイツ人だしな・・と思って外に出ました。
そういえばでも、店の看板を見なかった!と思ったのは家に帰って来てから。スペイン風ホットチョコレートの濃厚な風味と、寒さにすっかり気を取られてたんですね・・。というわけで、今回は店名なし。またそのうち寒くなったら名前をチェックしに行きます・・・でも、もう寒くなって欲しく無いですけど・・。



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