現在、アーティスト・イン・レジデンスという、奨学金+住居をもらって、その地に住み、製作するプログラムで、チューリンゲンに来ています。
チューリンゲン州は旧東独地区、中部ドイツ。 私がいるのは州都エアフルトから車で30〜40分くらいのところにあるミニ都市で、チューリンガー・ヴァルトと呼ばれる森に囲まれた、緑と山の多い地域です。
さて、ベルリンから離れたからには、そこでしか出来ない事をやらないと、と、山登りをしたりしていましたが、 チューリンゲン地方に来たら、これはやらねば!と周りのドイツ人に言われていたのが、『チューリンガー・ヴルストを食べる事』。
チューリンガー・ヴルストというのは細長くスパイシーなソーセージで、焼いて食べるのですが、 ベルリンに居ても、ブラート・ヴルストと呼ばれる焼きソーセージは、このチューリンガー。 つまり、普段からベルリンでも美味しいチューリンガー、本場のチューリンゲンで食べればさらに美味しいはず!というわけです。
    肉肉しい食べ物に興味が無い方なので、実は、ベルリン名物カレーソーセージを食べたのも、日本から来た友達と一緒に食べた、2年前が初めて。 このチューリンガーにいたっては、食べた記憶すらないという、アンチ・ドイツ食生活(?)を送っている私ですが、 この街に居る間に、一度は食べざるを得まい、いや、食べてみなくては、と決意していました。その機会が、いよいよ巡ってきました!
昼が一番長い日、夏至です!
この街は、山が近くにあるので、小高い山の中腹まで登り、いつまでも明るい夜を楽しみ、 巨大な焚火を焚いて、暗くなっても明るく暖かい火の側で薄暗い夜を楽しむ催しがあるのです。 主催は、街の有志が集まって作っている消防隊。

16才以下は夜10時まで。
小さな子達にとっては
始めての夜更かし?
点火作業は皆興味深々。
オーバーオールのお兄さん、
お姉さん達が消防隊。

消防隊員達が火をつけると、パチパチと良い音を立てて木が燃え始めました。 この香り、音、日本だと冬の風物詩なんだけれど・・。乾燥しているドイツの夏は、陽が落ちると、涼しいくらいなので、焚火も気持ち良いです。 一緒に行ったドイツ人のおばちゃんは、だくだくと汗をかいて、しきりに汗を拭いてたんですが、その汗が赤い! えっ、と思ったら、白髪染めが落ちちゃって・・と照れくさそうにしていました。
私は汗こそかきませんでしたが、顔が熱くてたまらなくなってきたので、水と、チューリンガー・ヴルストを買いに行く事に。
注文を受け、鍋から、いかにも“腸詰め”っぽい、もったり長いソーセージを出して焼いてくれます。 ベルリンでグリルをした時は皆スーパーで買った、プリッと成形されたソーセージだったのですが、さすが本場!とちょっと感激。


焼いているうちに、ぷりぷりと腸の皮が張って裂けて来ました。 裂け目から油が下に落ちて、じゅ、じゅ〜・・と美味しい音を出しています。焼き方もただのグリルじゃありません。 日本で言えば、炭火炙り焼き、って感じで、香ばしい香りが漂い、その香りで、ソーセージがちょっと燻製っぽくなります。 満遍なく火が通るように、ひっくり返しながら、時々水をかけます。『水をかけるより、ビールをかける方が美味しくなるのよ!』とおばちゃんが耳うち。 うちでグリルする時にはビールを必ずかけて、それこそ本場だから、私の家のも絶対食べないと! 後は、チューリンガー・クローセ(ジャガ芋の御団子)ね!うちの娘がケーキ職人だから、ケーキも・・としきりにうなずいています。 うーむ、ここに滞在しているところ危険・・と心の中で思ったり。
さて、いよいよ焼き上がり。こんがりと焦茶色になった皮、裂け目から見えている肉も美味しそう! 小さなパンに挟んで食べるのですが、ホットドッグとかと違って、ソーセージがパンの両側から思いっきりはみでています。 それに、バケツにはいったカラシとケチャップをたっぷりかけて、(これはカラシだけ、ケチャップだけ、何もなし、とそれぞれドイツ人にはこだわりの食べ方があるよう) いただきま〜す!
まずはパンからはみ出ている部分に噛み付きます。いや、くらいつく感じ。 バリッと音がして、中からじゅわ〜と熱い肉汁が・・美味しい!ちょっとしょっぱかったけれど、香ばしくて、 ケチャップの甘味が塩気と良くあって、カラシが酸っぱめで、肉汁が熱くて、皮がパリパリで・・・・あっと言う間に完食。 ソーセージも美味しかったのだろうけれど、燃える焚火の側で、草の上に座って食べるから、より美味しく感じて、 なかなか嬉しいチューリンガー・ヴルスト初体験となりました。



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