最近、旧東独、DDRの雰囲気を味わうお散歩を続けています。
ベルリンに来てもう3年になろうというところ。こちらに来るまで、旧東ドイツという国を特に意識したり 、興味をもったりすることはあまりありませんでしたが、ベルリンは何せ壁のあった街。壁を隔てて同じ街が、西と東、違う国に分かれていた場所です。 やはりドイツの他の都市よりも旧東ドイツの雰囲気が混在しています。
例えばドレスデンやライプツィッヒに行けば、もちろん旧東独の香りはするのです。しかし、やはりベルリンのような、一つ駅をこえると全然感じが違う! 電車に乗ってちょっと遠出をするだけで西と東の違いを感じる!という街はやはり無いと思います。
さて、それはさておき。今回は旧東独の食堂だった場所をそのまま残して作ったカフェ、Wohnzimmerを御紹介。
座り心地の良いイスとのんびりした花のインテリアに囲まれながら、ゆったりしてみませんか。

前回紹介したMariettaから徒歩10分ほど、大きな公園に面したこのカフェには、子連れのお母さん達から、よれよれのおじいさん、 レポートを持ち込む学生さんまでありとあらゆる客層でにぎわっています。
そして、ほとんどの人がとっても長居。
その秘密は、とっても座り心地の良いソファーにありました。
オーナーのReinold は旧西ベルリンに引越して来て数年後、壁崩壊。東側に移って来ました。大学で勉強の後、居心地の良いスペースを作りたい、楽しい事がしたい、とこのカフェーを開いたのが5年前。
『イメージはホテルのロビー』と彼。
ホテルのロビーには低くて深くゆっくり座れるソファーが沢山あって、あの感じが心地よくて好きだという彼は、イスではなく、座り心地を試して選んだソファーをこのカフェに揃えました。
友だちと一緒に好きなように改装したというこの空間は、ホテルのロビーというよりも、旧華族のお屋敷の跡のよう(イメージ)。壁はぼろぼろの部分と、薔薇模様の壁紙が混在し、細ーく部分的に金で縁取り。
よーくみるとソファーの全てが花柄、天井から薔薇のデコが下がっていたり、入り口のコート掛けにあるハンガーも全て花柄だったりとこだわりがある様子。



ぼろぼろの壁をそのまま残しながらも、その壁の上からちらりと黒薔薇の壁紙を貼っていたり、さびさびの暖房機にもつる薔薇模様が施されていた痕跡が・・・。
Mariettaとは違って、綺麗にまとまってはいないながらもオーナーのこだわりを感じ、聞いてみると『テーマは黒と薔薇』とのお答え・・・・。
うーん、、話だけ聞いているとごってりした印象があるかもしれませんが、なんとも不思議と力の抜けた落ち着く空間です。
旧東独のティーセット、旧東独の家具を揃えているといっても、特にこだわりを持ってしていたわけではなく、自分の好きなもの、お店に合うものを選んでいったらたまたま揃っただけだそう。
お店の共同経営者は旧東独出身の女の子2人。親戚から、知りあいから、と集まって来たのかも知れません。そしてまた、壁崩壊後数年は、そこら中で旧東独の製品、ランプや家具といったものがまったく無価値のものとして捨てられていました。この店内にあるいくつかのモノはそういう所から拾って来たものだと言います。

私がこのお店に行った時にはちょうど、来週からカフェ内で展示をする予定の編み物アーティストがお店で編み物をしていました。日のあたる一角でコーヒーとタバコをのみながら、ちくちくと編み物をする彼女。
その席に時々、店員さんも座っておしゃべりをするでもなくのんびりしています。(ちなみにここもセルフサービス制)
ひっきりなしにお客さんが来るにも関わらず、せわしない空気がまったくないのがココの魅力。
ほこりをかぶった造花を見ながら、のんびりとした時間をゆっくりじっくりと楽しみたい・・・。考え事をしながらお茶を飲んでソファーベットに横になっていたらぽかぽかと日射しも暖かく、ふと、居眠りしてしまいました。

*付足
ヴォーンツィマーのあるヘルムホルツ広場周辺は、最近足が向かなくなりました。
いままでの、ベルリンらしいのんびりした感じがあまり感じられなくなったことが1つ。 なんというか、人ごみ〜という感じが漂っていて、なんだか落ち着かないのです。以前はあったような、いろんな人が歩いている、と言う感じはもうありません。 『乳母車を押しているサングラスの女の人』か『ジーンズをゆるく着こなした若者』がほとんどになってきていて、 よろよろしたおばあちゃんが歩いていると、えっ、と思うくらい、目立ってしまっています。普通に、そこに生きるいろんな人たちがいる、という感じが魅力だったのに・・
『流行のスポット』になりすぎて、今はちょっと、もう・・という雰囲気になったことが2つめ。 友達と一緒に、どこかお茶しましょうか、という話になってもヴォーンツィマー、はもう名前があがりません。 逆にミッテの北部か、パンコウ周辺の小さなバーやカフェに足が向くようになってきました。 (2007年、5月筆)





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