An der Insel



あら、ベルリンにもこんな緑が沢山?いえいえ、これは残念ながらベルリンではありません。もちろんベルリンにも緑が多く素敵な所はあると思いますが、ここまで緑が生い茂る道というのはみかけたことがありません。ここは、私が5月頭からゲスト・アーティストとして滞在している中部ドイツ、チューリンゲンの小さな街、シュロイジンゲン。今回は、番外編です。
田舎といえど、一応人口は6000人、私の家+アトリエは街の中心にあり、徒歩1分で市庁舎、郵便局、スーパーマーケット、本屋さん等に行ける便利な場所です。まあ、しかし、人生初めての地方暮らしなので、滞在数週間にてすでに辛くなっていますが…。というのも天気がずっと良くないため、外に出れず、アトリエに隠って製作の準備にかかってみたり、ピアノを突然練習してみたりしても、とても何日も暇をつぶせるものでは無く、鬱気味に。もちろん、製作にかかれば良いんですが、今準備段階で、しかも製作は外でするので、黙々とスケッチでもする他、何もできない!しかも、外は曇りか雨!な〜〜んにも音が聞こえない状態で家に隠ってるってけっこう辛いです。ベルリンに居た時は、自分が静かにしてても、他人の声が聞こえたり、物音がしてたけれど、ココだと自分が静かだと耳がキーンとするくらい、静けさが家に満ちてきます。
でも、天気さえ良ければ、素晴らしい森が徒歩20分くらいの所にあり、サイクリングコースやハイキングコースも充実。自転車が早くもらえると良いんですが・・。後は、天気ですが、これから夏になるし、取りあえずは良し。
さて、家からてくてく住宅街を抜けて歩いていくと、廃線となった線路が見えてきます。線路を越えると大きな池があり、その後ろは山。そんな池を横切るところにあるのが、この道、アン・デア・インゼルです。島のそば、横、という意味を持つこの道、たしかに池に区切られた小島に向かう道とも見えなくは有りません。ほんの数十mの行き止まりの道は、多分、住民以外はほとんど通らないであろう道。通りの行き止まりと、右手に家が見えます。右手の家は子どもがいるらしく、木の上に小さな小屋と、その回りに滑り台からジャングルジムまである公園が。すごいなぁ。公園はともかく、木の上の隠れ家、小屋は子どもの時憧れたものでした。
エ池の方を覗くと、鴨が沢山!私が側に寄ると、餌をくれるとでも思ったのか、色々な所から鴨がやってきました。道を挟んで反対側の池には白鳥が。これも、多分餌付けされているらしく、私が道に足を踏み入れたとたん、バサバサと寄ってきました。
午池の回りでは鳥の声がそこここからして、明るい陽射しがさしています。水面をジッと見ていると、魚がいるのか、時々、波紋がよります。水彩画でも描きたくなるような美しい風景が広がっていますが、私は風景画は苦手なので、なんか別の事できないかな〜と、写真を撮ってみたり。道は行き止まりなのでもう一度、線路側に戻ります。廃線となった線路には、ペンペン草とかがたんぽぽが生い茂り、そこをたどって山に向かっていくと、しみじみ、淋しい感じがしました。
こんなサンサンと太陽がさす中、線路をたどって、なんで、淋しいと思ってしまうのか・・。昨日ベルリンから持ってきたDVDで見た、"幻の光"という映画の中で、浅野忠信が、線路を真まっすぐ歩いて、自殺した人を演じていました。なんで、あの人が自殺したのか、わかんない・・と悩む妻役を江角マキコ。その答えなのか、ちらちらと、光が見える、ひかれる時があるんだ、って話が出てきます。その、幻の光、が見えるわけないんだけれど、なんか線路をてくてく歩くと多分、その感じがちょっと分るような気がして淋しいのかな、と思いました。
でも、その考えの後、すぐ、この線路を使って何か作品作れないかな?と考えてしまう私。私には、今、幻の光は、見えないのです。


*通りのヒトカケラ*
人なつこい?白鳥達は、
カメラを向けると寄ってきてしまうので
なかなか撮影ができず。







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