Weinmeisterstrasse


ヴァインマイスター・シュトラーセはうちの最寄駅。短い道だが、そこには、東独時代独特のプラッテンバウ(パネル建築の建物)、コンテナを重ねただけの変わったオフィス、レンガ造りの古い建物(学生用のスポーツセンターとか工作室とかが入っているみたい)、ボロボロの壁の落書き、なんだか色々ぶら下げられている木の柵、緑が生い茂る一角まで、なにもかもがごちゃ混ぜに並んでいる。なんというか、ミッテらしい。ミッテはツギハギな地区だと思うから。
ミッテは東西統一した後、一気に急成長を遂げた街だ。急成長できたのは、廃虚が沢山あったからだけれど、そういう所に広がっていたオルタナティブカルチャーはミッテ地区ではじわじわと肩身が狭くなっているみたい。イリーガルなクラブが沢山警察に踏み込まれた、というニュースを一時期良く目にした。このヴァインマイスター・シュトラーセの名前がミュンツ・シュトラーセに変わる交差点の辺りにあったミュンツ・クラブも、警察の手入れを受けたと新聞で読んだ。そこでイベントを企画していた知り合いは急きょ場所を変更せざるを得なくなったそうだが、すぐ見つかるのがベルリン、何も問題なく無事、別会場でイベントを終えたそう。イリーガルなスペースの代わりにじわじわと幅をきかせているのは、チェーン店のカフェや大手ブランドのショップ。お金に物を言わせて小さなショップをバリバリと食い荒らして、どの街でも同じピッカピカのショーウィンドーが立つ。
そして、そんなオルタナ勢力とお金持ちのメジャー勢力の裏でそんな事どこふく風で暮らしている、おばあちゃん、おじいちゃん達がいる。東独時代からそこに住み続ける人達だ。彼等にとっては、角がオシャレなブティックだろうが、クラブだろうが関係ない。問題は、良いスーパーが近くに無い事。
この道を散歩することはほとんど無く、目的地が近所にあるのでその途中でこの道を通る事が多いから、サクサク周りに目を向けないで歩く。か、自転車で飛ばす。ちょっと足を止めるのはコミックショップ。ちらりと日本の漫画で何が今ドイツ語で出ているかチェック。オーガニックスーパーも覗くけど、ここはかなり高めなので、覗くだけ。アンティークショップには壁紙とかで面白い出物が有る事があるのでたまに寄る。
この道にはアブサン・デポートという、面白い店があって、ココに行く事もある。最初にこの店を見た時、アブサン、ってあの、ゴッホとかが飲んでて気が狂って耳を切り落とした、危険な飲み物でしょ?禁止になってるんじゃないの?ってすごく興味をひかれた。現在はドイツでは解禁らしいが、アメリカではいまだ禁止されているそうだ。
店内はアンティークの壁紙に、古い看板や、ポスターなんかを並べてあり、アブサンの怪し気な紫の光が絶妙にあう。アブサンの光、と書いたのは、アブサンを飲む際に、穴の空いた独特のスプーンの上にアブサンを浸した角砂糖を乗せて火を付け、ぽとぽとと砂糖を落とす、というやり方をするから。そのとろとろした炎を見ると中毒になる人の気持ちがちょっと分る気がする。幸か不幸かお酒は飲めないので中毒にはならないけど。この店に15種類程揃っているアブサンは手をかけて作られたモノばかりでクオリティも高く味もまろやかだが、友達がチェコで買って来たアブサンはマウスウォッシュみたいな緑色をしてて、すごい味がした。なんにしろ、ちょっと薬っぽい味わいがする飲み物で、その苦味と独特の風味をやわらげるために砂糖を入れて飲むのだそう。私はこの店ではアブサンではなく、プラムやクリスマスクッキー等の味がする甘いリキュールをよく購入。
クリスマス時期にはプレゼント用にここで随分沢山のリキュールを買った。でも店に寄る度、色々試飲させてくれるので、帰りはふらふら千鳥足。


*通りのヒトカケラ*
この道沿いでみかけたカワイイ看板。
窓にも切り絵が。






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