映画“Good Bye Lenin!”のドイツ国内大ヒットを受けてなのか、最近“オスタルギー(東へのノスタルジー)”という言葉をよく耳にするようになりました。 ベルリンのコーペニック地区に、昔のスタジアムを利用して旧東独(DDR)を寸分違わず再現した歴史と文化の保存テーマパークを作るとの計画も進んでいるようです。 そこでは旧東独国産車であるトラバントが走り、むっつり顔の国境警察や、国産コーラ、クラブコーラが存在する、ホンモノの東ドイツが展開されるのだそうです。 もちろん、日本人を始め、様々な国の観光協会と契約、非常に良い反応を得ています!と力説するこのテーマパークを作る予定のMassine Profuctionsのプレス担当者。さあどうなることでしょうか。
そのオスタルギー旋風にあおられるように郵便局が先日、同じテーマの旧東独の切手と現在の切手を組み合わせたセットを発売しました(下写真) なかなか面白いザインだったのでこの切手などを紹介しながら、旧東独製品デザインをちょっとみてみたいと思います。









上段の切手は1977年11月発行の“消防隊の仕事”シリーズ。ここでは3種類を紹介していますが、この他に消防車と消防船のモチーフ、合わせて5種類が発行されました。
『生命と市民の健康、社会主義の所有物と個人の所有物、また市民の経済と文化遺産を火災から救う』ことを目的とした消防隊。国の消防隊の他、地区内でも自発的な消防部のようなものがあったそうです。
左から、10Pf “梯子競争”モチーフ。消化のための梯子を持って走るという訓練が消防隊では行われていました。かっこよく火事場に駆け付けていこうという様子かと思ったら、レースの様子だったんですね。ちなみにこのレース、4.4mの梯子を携帯し、32.25m離れた塔の11mの高さにある窓までよじ登るのだそうです。最短では15秒でやりとげた消防士もいるとか。
20Pf “子どもの消防隊訪問”モチーフ。市民にその働きをアピールするために有効だったのが、社会科見学。子ども達は、FDJ(旧東独のボーイスカウトみたいなもの)のスカーフをしていますね。
35 Pf“人工呼吸”モチーフ。消防隊の仕事の“人助け”という部分にスポットをあてたもの。
そして左写真が現在の消防隊モチーフの切手。リアルな写真を使った2002年発行の切手。


次はDDRのサーカスシリーズ。
一番左は1978年発行の市民サーカス25周年記念の切手。
1954年にあった3つの大きなサーカスは1960年に統合し、東独中央サーカスとなります。目標として掲げていたのはソ連のサーカス。サーカスは東独国民の大規模な娯楽のひとつで毎年200万人以上もの来場者があったとか。
ちなみにこれは35Pf“白熊の曲芸”モチーフ。このほか、“馬の曲芸”“象と三輪車”“7人の曲芸師によるピラミッド”のモチーフの計4モチーフの組み印刷。
中央は1985年発行の東独国立サーカス25周年記念切手。
上記のように1960年に統合しひとつの大きなサーカスとなった東独中央サーカスは、1980年に東独国立サーカス、と名前を変えます。
この25年の間にこのサーカスは東独だけでなく世界各国を回り5700万人もの来場を記録。このサーカスは猛獣(ライオンとか?)が5頭、象が2頭、馬が6頭とエキゾチックな曲芸用動物(ヘビとか??)が7匹、30名の曲芸師、ピエログループが4つとオーケストラを2つ抱えていました。これらの曲芸師には国立の専門学校を卒業した人だけがなることができ、世界的にも非常に水準の高いサーカスであるとされていました。
中央は50Pf “トラの曲芸”、右が35Pf “一輪車組み体操”。このほか“空中ブランコのアクロバット”“象の曲芸”の4モチーフ、組み印刷。
そして右写真が2000年発行の“子どものための”ピエロ柄の切手。






旧東独(DDR)のデザインは一般的になんというかちょっとレトロかつ宇宙的な雰囲気の色使いと、強い輪郭、固い形が特徴な気がします。 Sammler express というDDRの切手+コイン収集雑誌にはソ連、ポーランド、チェコスロバキア、などのモノが外国モノとして多く紹介されていまして (切手は世界各国のモノがもちろん紹介されていますが共産圏が多く、アジアではベトナムのみ。日本のモノは残念ながらのっていませんでした。)これも似た雰囲気を持っています。 ちなみに雑誌の目次はドイツ語、ロシア語、英語の3か国語表記。
左は1977年発行の“市民と党は一つ”を表現したソ連の切手。下はコレクターのための特別消印。
これらのコレクター消印も様々な種類があり、メッセやスポーツの大会などに合わせて発行される切手と記念印はたいていセットになっていたようです。
この記念消印が、今見ると良い雰囲気。DDRのスタンプは独特の太く、木版のようなくっきりしたものが多いのですが、これもそうです。次には合わせてDDRの買い物用紙袋を御紹介したいと思います。

(下はDDRの切手のひとつ。工事現場モチーフだったのでピックアップしてみました。)




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