ベルリンで一番好きな場所は?と聞かれたら、お気に入りのカフェや、道が頭に沢山浮かんで迷ってしまうのですが、 ああ、ココこそベルリン!と私が思い、好きなのが、アレクサンダープラッツ。
別の国に行って帰りの飛行機の窓からテレビ塔が見えると、やっと帰って来た〜って実感がしみじみ湧きます。 人の顔は暗いし、なんだか全部灰色だし、毎日遊びに行きたい、という場所では決してないのですけれど、 2年前にアップしたAlexanderplatz駅のコンテンツを見てみたら こでもお気に入り、と書いてます。何故か、ずーっと何故か気に入っているんですね。
東独時代はその品揃えが比類なきデパートだった旧セントルム(現ギャラリア・カウフホフ)、テレビ塔、 旧東独国営外国人向け高層ホテルだったフォーラムホテル(現park Inn)、妙な形をした噴水、ベロリーナハウス…。 哀愁を漂わせるこの場所に立つと、街の歴史を肌で感じるからかもしれません。
しかし昨年秋頃から、この場所を、新たにポツダマープラッツに並ぶショッピングや観光の中心地にすべく、大規模な工事現場が築かれ 、最近は徐々に広場中を被いつつあります。駅をおりると、ガダガダガダ、ダダダ・・チュイーン。デパート内もうるさくてたまりません。
ポツダマープラッツのどこがどう良いと思って真似したいのか理解に苦しみますが、とりあえずお金が集まり、 2013年にはココを中心に13の高層ビルが立ち並ぶ予定とか。
うつろいゆくアレクサンダー広場を見て行きたいと思います。

左にベロリーナハウス
(32年、ペーター・ベーレンス)
中央にテレビ塔(69年)
右はギャラリアカウフホフ
(69年、Kaiser und Kunert)



7月6日

7月24日。ベロリナーハウスにシートが。

ペーター・ベーレンスの作ったアレクサンダーハウスとベロリナーハウスは戦前ですが、 現在のような東っぽいアレクサンダープラッツが作られ始めたのは1964年。 広場の新構想計画にあたって、6人の建築家によるコンペの結果、スイス人の建築家集団、チェシュナー&シュルツが手掛ける事になったそうです。 意外にも西側の人が手掛けていたんですね!テレビ塔、そしてセントルムと120メートルの高層ホテル、そして世界時間時計 (ココは昔、東ベルリン人の待ち合わせ場所だったとか。)!
このアレクサンダーハウス、ベロリーナーハウスは東独時代にも改築されていますが、 東西統一後、95年にアレクサンダーハウスは素早く改築され、98年には文化財保護賞まで取っています。 ちょっと遅れをとったベロリナーハウスも現在大規模な工事中。つい最近まで、割れた窓ガラスに一面のグラフィティ、 入口付近にはパンクスがたむろして、すごい状態でしたが、今ではすっかり工事用のシートに被われています。 ここには、ファッションデパート、C and A の支店が入るのだとか。うう〜ん、今までの広場の雰囲気がガラリと変わりそうです。 実際、TVのニュースで『工事が済んだら、私達の“アレックス”では無くなってしまうだろう』とコメントするおじいちゃんを見ました。
最近では西側より西らしい、なんて言われる事もあるミッテ地区で唯一、東らしさを色濃く残す地区だけに非常に残念です。
この広場では、華やかに東独25周年や、終戦30年が祝われた事も、 89年11月4日、壁崩壊の数日前に東独の政治体制に反対するデモが行われた事もあります。 私自身は東独どころか、壁の崩壊も実感していないわけですが、正に東独の歴史の中心地だった場所が、 キッチュなショッピングセンターに変わるかと思うといたたまらない気持ちになります。 しかし、もちろん、近くに良いデパートができて買い物できたり、そこで働けたりしたら嬉しい人もいるわけなので、一概には言えませんが。


7月6日

7月24日

さて、現在の工事でハイライトを迎えている(?)のがギャラリア・カウフホフ。 西のデパートがKDWなら、東側で最大のデパートのココ。 現在は2万平米もの広さがあるという割に品揃えがイマイチ、という気がするんですが、 東独時代は1万5千平米に他ではなかなか手に入らないような品も並べ、東独最大のデパートとして鳴らしていたようです。
品揃えはともかく、私がこのデパートで好きだったのは、建物の回りを囲む、蜂の巣のようなアルミニウムの部品を4000以上も組み合せて作った建築構造。 昨年末、結局全て取り外されてしまったのですが、反対運動が起こったり、市民に愛されていた建築だったのだなあと思いました。 ただ取壊して捨てるのはもったいない、と、その珍しい建築構造を残念に思った団体が、何千個かを買取り、市民に売るというアクションも行われましたが、 工事を請け負った会社がかなり捨ててしまったりして、結局予定より少ない数しか助ける事はできなかったようです。 さんざんスッタモンダがあった挙げ句、デパート側は、カウフホフから別館へ続く道の建物部分を、この部品で被い、この歴史的建築のひとひらを残すようにしましたが、 やっぱり巨大なデパート全体が被われているのとは全く違うわけで、こちらも残念な出来事です。
まだ、ここがポツダマープラッツのような存在になるとは想像できないような巨大な工事現場ではあるのですが・・。 うるさい工事現場を見上げ、2013年、自分はまだベルリンに居るのかなあ?と考えてしまいました。




画像、文章の無断転載を禁じます。
All Rights Reserved, Copyright(c) by Hideko Kawachi