路線図をAlexanderplatz駅中心に切ったもの
***Alexanderplatz

私が一番東ベルリンのイメージがあって、汚いと思いつつも気に入っているのがこの、アレクサンダープラッツです。 TV塔を見上げ、直したばかりなのにまた止まっている噴水の間を抜けて階段を降りていくと、地下鉄2番線、U2のアレクサンダープラッツ駅です。
この駅が面白いのはベルリン、クロイツベルグに本拠地のある美術団体、NGBKが駅を使ったアートプロジェクトを行っている所です。
駅にある、普通は広告ポスターなどが貼られる場所等を使って、1年か2年に一度行われる公募で選ばれた数名のアーティストによって展示が行われています。 2001-2003年では200近い応募者の中から6つのプランが選ばれました。コンセプトの詳細等は“アート”の方にNGBKについてまとめてアップしたいと思います。 ここでは今まであったプロジェクトの紹介を中心に駅のイメージをお届けします。

Rotkreuzgedicht
Bernhard Garbert
(赤十字詩)2002年12月から始まったBernhard Garbertによるプロジェクト。 私はかなり気に入っています。いろいろな言語(ドイツ語、英語、フランス語、チェコ語、ロシア語等)の単語が入り交じり、組み合わせによって様々に読み解くことができるこの詩は、 電車がアレクサンダープラッツに止まり、また動き出す間、車窓からまた違った組み合わせの言葉を読むことが出来、駅から様々な場所へとイメージを走り出させることができるのです。
そういう意味では非常に駅にしっくりとはまり、駅でこそ存在価値を発揮するプロジェクトだと思いました。また、この赤十字は遠くから見ると、まるで雪の結晶のようにも見え、 クリスマスの時期にも合っていました。
電車と壁の“詩”を映したもの。MOSKOW, LONDONとあります
U2番線Alexanderplatz駅と電車。
ココからモスクワへ?ロンドンへ?
『LOVYOU』とどーんと大きく描かれた横にとても小さく『FEHLER』(失敗)と書かれています。うーむ。
壁の“詩”。LOVYOU, FEHLERとあります。
『PAY/WAR』『DAS/WAS』『CAR/ MAN』『WAS/WAR』『BAR/MAN』ドイツ語と英語が入り交じり、意味が交錯しているバージョン。様々に読めると思いますが、『PAY/WAR』(払う/戦争(英))『DAS/WAS』(それ/何(独))『CAR/ MAN』(車、戦車/男、人(英))『WAS/WAR』(何/〜であった(英語のbe動詞過去)(独))『BAR/MAN』(棒/男(英)現金/人々、世間、誰もが(独))
壁の“詩”。『PAY/WAR』『DAS/WAS』『CAR/ MAN』『WAS/WAR』『BAR/MAN』

Parasititaere Verhaeltnisse
Stella Geppert
(寄生的な関係)2002年初頭から始まったStella Geppert による、小さな寄り掛かり用クッションを駅構内に取り付けるプロジェクト。 彼女は私の通うベルリン美大の彫刻科をちょうど卒業したばかり。“寄生”という言葉から受けるネガティブなイメージより、お互いの為にお互いが、というイメージの作品だと思いました。
柱についていたクッションは、ドイツ人がちょうど寄り掛かって肩にぴったりの高さで、私にはちょっと高すぎましたが、階段のてすりに取り付けられていた腰用のはとても心地よかったです。
駅で電車を待っていた人達は、特に気付いた様子もなく、クッションのある場所に寄り掛かっていました。これが無くなったのは残念ですが、 ずーっとあるとただのクッションになってしまうのかもしれません。アートがアートとして在れる時って?うーん?

U-Deur
Helgard Haug
私が来たばかり、2000年6月に設置されたHergart Haug の匂いを売るプロジェクト。
彼女が作ったのは、このアレクサンダープラッツ駅の匂いと、その匂いの水の自動販売機。これを1年設置しました。私は何度か試そうとしたのですが、壊れていました・・残念。
匂いは、普段は意識されませんが、例えば家を離れていて、帰って来た時にドアを開けると強く意識されます。彼女はそういった、自分に馴染み深い場所の匂いの輪郭を際立たせ、旅行者に持ち帰ってもらい、匂いだけでなくアレクサンダープラッツ駅の記憶をも持ち帰ってほしいと願ってこのプロジェクトに着手したということです。
ちなみに彼女曰くこの匂いは『ちょっとパン屋、ちょっと油っぽいほこり、そして沢山のテクニック』を思い出させる香りなんだとか。確かにそんな匂いですね、この駅。くんくん。



匂いの自動販売機。日本のトイレにあるティッシュ販売機くらいの大きさと形。

暗い地下鉄構内に佇む東モノを売るお店、外観
この駅にはU2の他、U5、U8、Sバーンと沢山の路線が交差していますが、U2の駅の紹介が多くなってしまいましたので、ちょっとおまけ。
アレクサンダープラッツ駅構内にある旧東ドイツ(今は民営)のモノを売っているOst Produktのお店です。化粧品や、陶器、食べ物などが売っています。 ごちゃごちゃで恐ろしく狭い店内、ジャンルを問わないめちゃくちゃな品揃え。でもパッケージが気になるものがたまにあるのでみのがせません。

*付足
2007年5月、アレクサンダープラッツ駅の構内は大規模に工事が進められています。 この、旧東独の商品が売られているお店のある場所も、工事が始まっています。 改装工事が終わった後も、このお店は生き残るのか。それとも、どこの駅にもあるパン屋とピザ屋、アクセサリーショップになってしまうのか。 不安でもあり、とても残念でもあることです。アレクサンダープラッツ自体も、ギャラリア・カウフホフの大改装工事が終わり、 トラムの延長工事が始まってから、随分様変わりしました。そのことについては別コンテンツ→
アレクサンダープラッツ
アレクサンダー広場のパンクたち
で書いています。 このアートプロジェクト自体は続いていて、なかなか面白いものが沢山発表されました。駅員室になぜか法王が居るとか。 U2だけでなく、U8のアレクサンダープラッツ駅で行われたプロジェクトで、電車が駅に入ってくると同時に、ジャジャジャーン!とファンファーレが鳴るという サウンドアート作品もありました。これはかなり面白かったです。




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