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(c)Internationale Filmfestspiele Berlin |
最初のシーン、 カルマンが電車に乗ってぶつぶつと『検察ですー検察ですーチケットを見せて下さいー』とガラガラ声で繰り返すシーンから、
最後のシーンまで、全てのシーンが何かしら、つながりがあり、非常に示唆的だ。
自称詩人カルマンが、書いた詩『我の名前は恐怖ではない・・』という詩や、チェコ国境で、国境警備隊の眼をすり抜けて、 オーストリア側に渡ろうと雪の平原を歩くカルマンの前に、真っ白なお尻としっぽをふって飛び跳ねるバンビ(子鹿)が現れたり(バンビは再度現れる)、 氷の上を飛び跳ねて歩くカルマンが、湖に落ちたところから、なぜか作り物の庭小人(庭に飾る陶器製の小人。 にっこり笑顔につるつる真っ赤のほっぺたが気持ち悪いが、これを庭に飾ったりしているドイツ人は案外多い・・)がぴょこんと現れたり。 どこまで行っても真っ白の平原を歩くカルマンの叫びが、何をしたいのかよく分からない、 つるんとした顔のセバスチャンが、初対面で熱烈に好きになった!と宣言するピア(Pia Hierzegger)にふられて、 ふらりと出かけたインドネシア?のシーンに重なる。 |
ストーリーが面白いとか、俳優が良かったとかそういうことではなく、1つの作品として言葉を語ろうとしているのが良い。
どこへ行くのか。何が待っているのか。 どこかへ行くチケットを、どこかへ帰るチケットを、自分は見つけられるのか? そんな疑問をうっすらと漂わせながら、この映画は終わった。耳には、カルマンの、ガラガラした声が今でも残っている。 とはいっても、カルマン役を演じた、Paulus Mankerはよかった。監督業もするオーストリアの俳優だそうで、この映画だけ見ると、怪優にみえるが、えー、 会見にやってきた本人も、うわってくらい味があってぼさぼさ髪に丸顔が、映画そのまんまだった。怪優なのか?他の映画も見てみたい。個人的に、セバスチャン役のAugust Diehl が好きな事もあって、 (ドイツ人にしてはとても平べったい顔の彼は、つかみ所がなくって、いい人を演じると平べったいが、悪い奴を演じると、 心のどこかに深く闇がありそうに見えていい。映画、『Lichter』でも、ずるい男をずるいまま、でもちょっと悲しく好演した) 10点満点で7くらい、かな。 |
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