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尾形さんが バイオリンを持ち出した時 す、すごい弾けるの? と 思わせて実は・・ |
さて、シャウビューネに作られた小さな舞台。
その横に生演奏スペースが作られ、イッセーさんが次のヒトになる着替えの間
(舞台の横に鏡台があってそこで着替えるところも見せている)にキミョウな音楽が流れます。
今回は、 1:昔は売れた歌手、坊主更正編 2:引越しバイト君、夜逃げの手伝い編 3:場末のバーホステス、海洋深層水編 4:勤続三十年父、息子スペイン行き編 5:接待サラリーマン、若年性アルツハイマー?編 (タイトルは勝手につけてみました。)の5人。 どこにでも居そうな、いるいる、あるある!という感覚とともに、 そんなフツーの人達をふっと目の前に登場させてしまう尾形さんのすごさ。 フツーを演じるというのはなかなか出来ない技。 しかも、どの人になった時も、違う人!友人が『もしかしてイッセーさん顔がゴム製?』とか言ってたけれど、 自由自在に伸び縮み、年齢も性別も職業も違う人達を確かにそこに存在させてしまったのです。 昔は売れた歌手、の顔は、ちょっと人生に疲れて、でも媚びたような顔。 引越しバイト君のつるりとした顔。接待サラリーマンの軽そうでずるそうな顔がじわじわと汗をかく様子。 表情とかじゃなく、人間が違う感じがするの、すごい!どうなってるのこの人!!としびれながら見ました。 『ちわーす、引越屋なんすけどー。じゃっおっじゃっましまっすー』という金髪のバイト君の口調! いるいる、こういう人!というか知ってる!もうそれだけで笑いが込み上げてきてしまいます。 後は小ネタが・・!海洋深層水とか、小岩駅とか絶妙なタイミングで出て来るので、固有名詞聞いただけで笑ってしまう。 |
特にストーリーがあるわけではなく、フツーの人の日常なんだけれど、よーく考えてみるとなんだか恐い、変、という感じがする場面ばかり。
ど忘れが進んで自分が誰なのかもわからなくなってしまうサラリーマンや、 死んだ夫が入った布団巻きを運ぶはめになる引越し屋さん等は、妙なリアル感がある恐い話でもあります。 そしてリアル感といえばすごいのが、舞台セットになんにもないのに、 例えば、売れない歌手が、すっと人さし指と親指を動かしただけで、そこにマイクが!(みえた気がした) 会社を辞めた息子を説得すべく、バーで待ち合わせしている父が、ピーナッツの皮をしゃりしゃりと剥き、 口にほおりこみ、最後立つ時に、ぱっぱっとその皮をズボンからはらった時、仰天しました。 ピーナッツの皮の感触が私の手にも感じたからです。あの、赤茶色のカサカサした皮の感触が、はっきりと私の指の先に! 『ピーナッツが見えた!』と騒ぐ私に、『私にも車が見えた!』と友達。 駐車場で接待相手を待つサラリーマンが、ねぎが歯に挟まってるのに気付いて、バックミラーを見ながら爪楊枝で取出そうとする、 というシーンがあったのですが、そこで、満車の駐車場の車の間を通ってバックミラーをくっと自分の方に向ける、という動作が、 まさに車と車の狭い隙間を通っているように体が動いたのです。 背中の筋肉の動きが・・!確かに車が見えた! |
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今回はキーワードに『奇術師』があるようで、ホステスさんが、
『私の初恋はぁ〜、船の上でぇ〜、彼が私の髪になんかついてるよって、さっと後ろからバラの花をだしたのぉ〜』
というエピソード(こんなんあるか!)や、サラリーマンがバッグを漁るとするするとシャツが出て来るシーン等が
サブリミナルのように何度も現れました。
奇術になんの意味が込められているかはわからねど、イッセーさんはまさに奇術師、いやびっくり箱か。
イッセー尾形の作る奇妙な現実に連れて行かれてしまったような気がしました。 しかし、今回一番、すごい!! と思って感動したのは、ドイツ人と笑う所が一緒だった事。 ドイツのコメディを映画館で見ると、皆がわっはっはっと受けているところで、 全然面白く無い、どこで笑うの?と首をかしげてしまう事が多かった私は、今回のイッセーさんの公演は、どうなるんだろう?と思っていたのです。 しかし、同時通訳による微妙なズレこそあったものの、 私が笑うツボで隣の知らないドイツ人も体をゆすって笑い、満場の拍手、アンコール。 本当に素晴らしい笑いには国境は無いんだな、と実感させられた舞台でした! 『南ドイツと北ドイツでは笑うツボが違う』と、するどく分析するイッセーさん。 ドイツ人ネタとかもいつかやって欲しい!そこでドイツ人が笑うのか?非常に気になる所です。 *追記 2007年の初笑い、でふたたび、イッセーさんがやってきました。 ベルリンにも『イッセー尾形』の名前が知られてきていることを感じさせる、『チケット完売』の文字がチケット売り場に踊ります。 新聞の批評でもべた褒め。今回は、メレット・ベッカーさんではなく、ベルリンの人気歌手マックス・ラーベとの共演が、一人芝居の最後にありました。 昭和の懐メロ“白い船のいる港”を、ラーベがつたない日本語で歌い、尾形さんがウクレレの伴奏。 こちらは、ドイツでは『ちょっと蛇足』という評価もみかけましたが、 ベルリンの若いアーティスト達を支援していこうという(尾形さんは『日本におけるドイツ年』の時、マックス・ラーベを日本に呼んだのです) 心意気が感じられて素晴らしい、と私は思います!(2007年3月、筆) なお、今年5月、再び、尾形さんは、マックス・ラーベ氏を日本に呼ぶ模様。詳細はサイトなどでチェックしてみてください!! |