この時期、ドイツのレストラン、スーパーにずらりと並んでドイツ人をひきつける食べ物、白アスパラガス。
実のところ、ドイツ人達がシュパーゲル!と目を輝かせるたび不思議に思っていましたが(私にとってはすんばらしく美味しいという程でもないので) 多分、その味だけでなく、時期が短い旬の味、というのが影響しているのでしょうね。 私が4月になると、桜を使ったお菓子が無性に食べたくなるのと同じようなものかな。
さて、その料理法について、シュパーゲル料理で書きましたが、 今回は、ドイツのシュパーゲルの産地等について書いてみたいと思います。
普通の緑のアスパラガスと違い、土の中で埋めて育てるため、白く育つ白アスパラガスは、甘味が強いのが特徴です。 芽が出て来て、土の表面にでてしまうと、その白さと甘味は失われ、2級品として扱われてしまうので、常に注意していなければならず、 また収穫もひとつひとつ土を丁寧にかいて、アスパラを傷つけないように掘り起こす、非常に手間のかかる野菜。 1つのアスパラを切り取る時に、隣のまだ育ち切っていないアスパラをまちがって傷つけないようにも注意。 専用の刃物を使って切り取る作業はなかなか大変、常に中腰なので、腰がすぐ痛くなってきます。
しかも切り取ったアスパラ、折れやすい!運搬の途中で折れたアスパラガスは、“折れシュパーゲル”として、三分の一くらいの値段で安売りされます。

  1日2回畑をチェック。
盛り土の上に頭を出した
アスパラガスの回りの土を
そっと掘り、専用の刃物で
ざっくり刺すように切る。



そんな大変なアスパラ収穫作業、運搬、仕分け作業。 空前の就職難とはいえ、安い賃金で、一日泥まみれになって畑仕事をしたく無い、というのがドイツ人の本音。 というわけで、毎年この時期になると、ドイツのアスパガラス農家にはチェコやスロバキア、ポーランドを初めとする東欧の人々の出稼ぎにやってきます。 特にベルリンは、東欧との国境に近いため、その割合は高いそう。
『ここでアスパラガスの季節いっぱい働けば、ポーランドの1年分の給料が稼げるんだ。 本国では仕事も無いし、文句は言えない』とはベルリンのアスパラ農家を手伝っている出稼ぎ労働者の言葉。 私が行った農家では、裏が巨大な仕分け工場になっていて、太さを選別したり、折れたり、穴が開いているアスパラを取り分けたりしている人達が沢山働いていましたが、 ドイツ語で話しかけた所、I can not speak german と言われてしまいました。 多くはポーランドからの出稼ぎ労働者だそう。


安売り“折れアスパラ”コーナー
収穫作業がすんでもまだ手間がかかるのがシュパーゲル。どこまでも大変な野菜です。
シュパーゲルを食べる時はしっかり皮を剥く、と言う事を料理法のところでも書きましたが、 皮が残っているととろりと柔らかいシュパーゲルの喉越しが台なし。 というわけで、何百本とあるアスパラガスをレストランで出すためにまた、東欧の労働者の手が必要なわけです。
アスパラ農家の人達に『アスパラ掘るのとても大変な作業ですねえ〜』と声をかけると、 『何でも私達のポーランドの労働者がやってくれますから!』と自慢げでしたが、私はなんとなく、不可解な気持ちでした。
歴史上最悪の就職難!仕事が無い!とか騒いでるのに・・。美味しいアスパラでしたが、剥き残した皮が歯にはさまったような、 どこかすっきりしない気持ちがちょっと残ったシュパーゲル農家訪問でした。




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