Muenzstrasse



Muenz、がMuenze となると小銭、の意。小銭通りって意味なのだろうか?小銭というと、漫画、『エロイカより愛をこめて』のJムス君を思い出す。 作者の青池保子先生は、なんとドイツのエーベルバッハ市から観光に貢献したとして表賞されたんだったか、名誉市民にされたんだったか、とにかくすごい。 最近、彼女のエッセー集、『エロイカより愛をこめての作り方』を読んだら、この漫画が、ドイツ軍発行の雑誌で紹介されたと書いてあった! (主人公がNATO軍の少佐なので)すごい!青池先生、ベルリンに来ないかなあ〜。
話がずれたが、この道はゲーテ・インスティテュート時代毎日のように通った通り。 というのは、この通りに好きなベトナム料理店があってそこで毎日のようにお昼を食べていたから。 そのベトナム料理店では当時、毎週土曜日のみ生春巻きを出していて、これがすごく美味しくて毎週のように食べていたら、いつからか毎日出るようになった。 この店ではこの生春巻きだけをテイクアウトする人も多く、人気メニューなのだと思う。友達皆ここの生春巻きのファンだったが、ある日、相方がこの生春巻きを食べ、 ものすごい食中毒を起こしてしまい、それ以来、他の店に行くようになった。
そのベトナム料理店に行かなくなってからも、この道はちょくちょく通る。アレクサンダープラッツに行きたい時は、この道を通って、 Rochstrasseを曲がって行くのが一番好き。 特に夕方、しっとりした空気、空がちょっと濃い色になりはじめてビルの色が一段深い色に変わる瞬間くらいに通ると綺麗。キレイといっても、この道はー清潔ーでは全然ない。 犬のふんとホコリ、水たまりとビール瓶のカケラがいつも落ちているような道なんだけど、それがこの時間に通ると、息づく、とでもいうのだろうか、 店の明かりと相まって実に暖かい感じに一瞬、変わるのだ。
夜になってイキイキしはじめるのが、昔、上の階にミュンツクルブがあった角。 このクラブはかなり人気があったのだけれど、警察の手入れにひっかかって閉店となった(と新聞で読んだ)イリーガルだったのか、 ドラッグでも売ってたのか、何にしろべルリンらしい話だ。そのビルの地階には、アルト・ベルリンという濃ゆい居酒屋がある。 イギリスのパブに似た、煮染めたような壁や机の色、妙にこだわりのありそうな服を着てるバーテンダー、煙草の煙りと立ち飲み客。 そこここに変な小さな飾りとかがある、統一感の無い内装は、客層によっては、アル中でサッカーファンのおじさんが集まる居酒屋になってしまいそうなギリギリの所。 本当はこっそり写真を撮りたかったんだけれど、それが許されない雰囲気が充満していたのでカメラを取りだせなかった。 で、その話をしたら、友達が、その居酒屋の前に貼ってある張紙を指差して、読んでみろという(張紙の内容は下を見てね)。・・・カメラ出さなくて良かった・・。
居酒屋の隣の、暗い道を入って、中庭に行くと、そこにはアンドレアス・ムルクディスというセレクトショップがある。 コスタス・ムルクディスの兄弟(どっちかは分らず)が手掛けるショップは、古いタイルが残る空間に、整然と商品が並んでいる。 セレクトは良いのだろうけれど、私にはとても高くて手が出ない。皮や銀のアクセも素敵。 奥の方の店には、ベルリン発の雑誌やプロダクト、チョコレートなんかが並んでてお土産にも良いかも。
店が、こんな所に人が住んでいるの?と思うようなボロいビルの影にあるのが、いかにもベルリンらしい。
そこを出ると、ベン・シャーマン、コンバース、アディダスといったメジャーなショップがずらずらと現れる。ビル部分は古いビルで、 店の部分だけが、ポーンとガラス張りのショーウィンドーになっているのがなんだか不思議なコントラストの場所だ。 ショップ群の中には、SHIBUYAという店もある。日本のキャラもの等も扱っている、多分、オシャレを狙いたかった店。 SHIBUYAって命名はちょっと・・足を踏み入れ難い命名だな。(と思っていたら、MTVと並ぶ音楽チャンネルVIVAで、カラオケ番組、SHIBUYAが始まった。) そんなのがある近くに、もう潰れてから何年にもなる、美容室がぽつりとある。『マニュキュア始めました』の破けたポスターが悲しい。変わる時代に付いて行けなかったのだろう。
さらに行くと、アレクサンダープラッツに向かう交差点に出る。この道はココで終わり。 ベルリンのアタラシものと東時代そのままのところが、ギザギザに噛み合ってるような、噛み合ってないような通りなのだ。


*通りのヒトカケラ*
Alt Berlin の前にはってある張紙。
『親愛なる信者達よ
心地よい温度と、
ほとんど捌き切れない混雑のため、
私達の神聖なる神殿は、
月曜から土曜日の20時に開きます。
ハレルヤ!
あ、そうそう、
犬と、デジタル写真についての私の意見はもう御存じですよね。
ちゃんとそれに従えよ。
お父さんに乾杯!』





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