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ベルリン映画祭で見逃して、とっても気になっていた映画をやっと観に行ってきました。『Sehnsucht』ー憧れー。
ベルリン郊外、ブランデンブルク州にある、人口200人という小さな村とその村から少し離れた村を舞台に、
俳優ではなく、道でスカウトされた素人俳優が演じる映画。というのが、私がこの映画について漏れ聞いていた全て。 ベルリン映画祭のコンペ部門で放映され、賞こそ逃したものの『近年のドイツ映画の中では最高の作品』などと絶賛されました。 『Halbe Treppe』や『Schulze get the Blues』など、ドイツの田舎っぽいベタな風景や、 ドイツの普通のおじちゃんおばちゃんの様子が描かれている映画は大好き!なので、期待、大、で映画館にでかけました。 注>>ちょっとだけですが、ネタバレありです。 分かってしまうと、微妙に映画の面白さが削がれます。 淡々と静かに過ぎて行く、小さな村の日常。 そこで生まれ、多分、そこで人生を終える3人。 仕事をこなし、家に帰ってのんびりとご飯を食べ、寝て、起きて、それなりに満ち足りていた生活。 しかし、偶然起こった事故のようなできごとが、心の中に眠っていた『憧れ』を揺り起こす。 チェックのネルシャツに、青色のオーバーオールに身を包んだ、がっちりした男が寒々しい荒れ野原に立っている。機械工のマルクス。 どうやら車の事故があったようで、救急車や地元の消防団の姿が。 帰宅。 妻のエラと言葉少なに、事故の話を交わす。どうやら後追い自殺だったよう。 エラは、『ロメオだって、ユーリアが死んだら生きていけないと思って死んだでしょ』と、どこか無邪気に言うのだった。 |
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地元の消防団員でもあるマルクスは、ある日、近くにある別の村にある消防団との親睦会に出席するため、消防団員たちと数日間、出張。 親睦会の夜、酔っぱらった彼は、ロビー・ウィリアムズの曲にのって踊った。 次の朝。 泊まっているホテルでない部屋で目覚める。 台所に行くと、そこには、親睦会を行ったレストランで働いていたウェイトレス、ローゼの姿があった。 はにかみながら『カフェ飲む?』と尋ねる彼女。マルクスは、戸惑いながら、ホテルに戻る。 次の晩、いったい何があったのか、思い出せない彼は、ローゼに再び会い問いかけるが・・。 マルクスは帰宅するが、どこかよそよそしく、違和感を感じるエラ。自宅に帰っても落ち着かず、マルクスは『もうこれが最後』と言いながら、ローゼを訪ねる。 それを声を荒げて責めるでもなく、彼への思いが募っていた(ここで『Sehnsucht』という言葉が使われる)ことを伝えるローゼ。 そして、突然、事故は起こった・・。 |
最後の終わらせ方が、とても良い感じだったにも関わらず、私は、どうしてもこの映画が好きになれませんでした。
妻のエラ。よーく見れば可愛いのに、カール髪を1つに束ね、似合わない長さで切りそろえた前髪。 大きなセーターに、サイズがどうも合ってないストーンウォッシュジーンズ・・。 ああ、こういうドイツ人の女の人、居る、いっぱい居る! ちなみに、エラを演じたIlka Welzの本職は看護婦さん。イルカの彼氏がキャスティングにスカウトされ、試し撮りについていったところを彼女自身がスカウトされたとか。 ドライフラワーが花瓶に指してあるような、ほこりっぽい居酒屋で働くローゼの カーテンみたいな生地のベストにスカートの、ださいユニフォームに、 こういうクナイペ(居酒屋)ある!おじちゃん達たまってる!と感激。 近所のおばちゃんたちのケーキ&カフェの集まりや、消防団のおやじたちの飲みっぷりのあまりの生々しさに、 笑いがこらえられなくなったり(生々しいもなにも、本物なのですから)。しかし、肝心の主人公の3人に、感情移入ができなかった。 その理由は何なのか? |
(c)Pifflmedien GmbH 2006 ああ、このユニフォーム(涙)。 レースにパッチワークのカーテン 細部までリアル・・・本物です。 ローゼを演じるAnett Dornbusch 本人もウェイトレス。 監督がよくその店に行っていて、 発掘された。 |
(c)Pifflmedien GmbH 2006 家に帰っても、仕事着着用のマルクス。 そういえば、田舎で知り合った 機械工のおじちゃんも そうだった。 日曜日だけは普通のジーンズ姿で 誰だかわからなかった・・ マルクスを演じたAndreas Muellerは 自動車機械工で、 ブランデンブルクの消防団の メンバーでもある。 つまり、ほぼ立場は役柄と一緒。 |
まず、この物語を映画にしたかった理由がわからない。
ほんとうに、ちょっとしたことから起こる、小さな心の揺れを出したいとすれば、でも、素人さん俳優だったのは、ちょっと? 背中で、目だけで、戸惑いをスクリーンの上で、まったく他人の観客に理解させるのはやっぱりプロじゃないと難しい? そういう意味では、周囲の人たちがあまりにリアル(本物)なので、3人の間に起こっている出来事は、ちょっと浮いていたように思える。 それから、会話という形で発された『ことば』がほとんど無かったこと。 こういう、ことばで自分を語るタイプでない人は、沢山いるだろうし、そういう意味ではリアルなのだけれど、だったら言葉なんか無くても良かった。 3人の人柄、がみえない。 だから、その心の動きもみえなかった。 |
この映画を撮った監督、Valeska Grisebachはブレーメン生まれ。
ウィーンのフィルムアカデミーとベルリンのフィルム・TVアカデミーで映画を学んだ彼女。 卒業制作として撮った65分の初長編『Mein Stern』でベルリンを舞台に14歳のニコルとクリストファーの恋を描き、注目された。 この、ニコルを演じたのはニコル・グレーザー。クリストファーを演じたのはクリストファー・シェプス。 本人を演じ、実際、2人は恋に落ちていたのだそう。この映画を見た友達によれば、『Sehnsucht』より格段に良いらしい。 見てみたかったのですが、DVDが発売されておらず、レンタルとかももちろん無し。がっかり・・。 |
(c)Pifflmedien GmbH 2006 喉のとこ、にきびやひげそり怪我の跡が。 髪の毛が油っぽい〜! 普通の人なら、でもそういう日もあります。 |
ただ 憧れを知るものだけが わたしの悩みをわかってくれる ただひとりで すべての歓びから離れ わたしは見つめる 虚空のかなたを・・ |
というゲーテの詩があるのですが、
この映画は、まさにこの詩のようです。どこまでも遠くをみてしまう。そこに喜びがあるわけではないのに・・・。 いや、悪い映画じゃなかったです。 ・・・・ああ、でも、主人公のマルクスとローゼが・・魅力が感じられなかった・・。 (実は、私がこの映画に魅力を感じなかったのは、そこに集約されてしまうのかも。みためとか、些末なことですが、案外、重要だと思いませんか・・?) |