Wadzeckstrasse



気がつけば、もう五月。今年は冬がとても長く、もう春はこないのではないかという寒さだったけれど、やっと暖かくなって、桜がもりもりと咲いている。 ベルリンで見かける桜は、日本の染井吉野みたいに、儚くて、風が吹けばさーっと散るという風情ではなく、 八重桜みたいなみっしりとした花びらで、枝がしなるくらいに咲いている。そして、枝を揺らしても散らず、花という固まりでぼとっと落ちたりする。 ちょっと日本の桜のイメージと違うのだが。(似ているのもある)
桜の時期にだけ、ふと通ってみたくなる道が、アレクサンダープラッツの裏手にある、Wadzeckstrasseだ。 この道、桜が入らないと、いたって地味な感じの東独の香りを色濃く残す道。東独時代の街灯と、冷たい感じのするビル、そしてプラッテンバウの、団地っぽい建物がつらり、並んでいる。 Ackerstrasseのところで、雪が降ると印象が変わる道、と書いたけれど、 この道は、まさに桜が咲くときだけ、大きく印象が変わる道。 アレックスから自転車で、プレンツラウアーアレーの方に上がっていこうかな、という時に、よくこの横を抜けるのだけれど、Wadzeckstrasse自体には、入ってみようと思ったことがなかった。 というのも、この道、途中で行き止まりになっていて、この団地に友だちがいればともかく、道ぞいには店も無いし、駐車場だけ。 しかし、桜のこの時期となると、ずらりと並ぶ桜の並木がぱあっと華やかで、ふらふら〜と自転車を止めて入り込みたくなる魅力に溢れた道に変わるのだ。
この時期、花見が企画したくなり(企画というほどでもないが友だちを集めて、お弁当を食べる)色々、場所候補を探すのだが、 ベルリンには桜の下で宴会できるような公園とかに桜が沢山植えられている、ということが少ないように思える。うちの近所だと、 nolaのある公園に、数本植わっているけれど、それくらい。 例えば、東京で言えば、新宿御苑みたいな、都会のど真ん中にある緑、という印象のTiergarten。あれだけ大きければ花見できる場所があるに違い無い、と思って昨年、自転車で桜を探しがてら、花見、というのを友だち数人とやった。 が、ほとんど見つからず、けっこう探しまわって見つけたのは、1本だけ、ぽつりとあった白い桜。 後は道路ぞいや、駐車場の横とかで、なかなか花見がしにくい感じ。
多分、ドイツの人は、桜を見ると、ああ、この道をゆっくり夜桜見物しながら散歩したい、ベンチとかあれば座ってお茶でも飲みたい(飲めるひとならお酒で)とか、 おっ、ここは花見の穴場・・とか考えないのだろう。そうでなければ、ベンチもないさびれた駐車場横に、もりもり咲く桜をみっしり植えたりしないはず。 もちろん、団地の人たちの目の保養にはなっているのかもしれないけれど、駐車場横で排気ガスも沢山浴びているらしく、桜の香りが全然しない。 もったいない!!
そして、桜の木が咲いている横で、大きなトラクターががりがりと工事をしていた。 うーん。無理矢理シートを持ってきて花見をするにしても、団地の真横では、どうも落ち着かない。 工事現場がある関係でひっきりなしに大きなトラックも通る。夜桜だったら、ちょっと落ち着いて楽しめるかな?と思って、この道を後にした。


*通りのヒトカケラ*
トラム(路面電車)の標識。

この先トラム通行止め、ってこと?
昔の型らしいトラムの絵と
ちょっと曲がっているのが気に入った。





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