Richard-Sorge-Strasse


リヒャルト=ゾルゲ・シュトラーセはフリードリッヒスハインにある。 カール・マルクス・アレ−をどんどん東に向かって、 丸屋根の塔が目印のフランクフルター・トア−が見え、映画館コスモスの所で左に折れる。 映画館コスモスは最近閉館し、ベルリン郊外で巨大なディスコ、"ザ・ニュー・ワールド"を経営する人に買取られてしまったそうだ。 ザ・ニュー・ワールドとはまたしかし、ベタな名前・・。 有り難い事に、彼はこの映画館をディスコ、ザ・ニュー・ワールドにするつもりはなく、マルチ・カルチャー・スペースにしたいんだそう。 うーん、典型的ベルリン、空きスペースの使い方だ。 このコスモス、60年代初め、3400席もある巨大な映画館として始まり、 1996年には、ベルリンでも初のマルチプレックス映画館として鳴り物入りで再スタートして注目されていたのだが・・。
リヒャルト=ゾルゲ・シュトラーセにある、小さな、早稲田ACTミニシアターを思い出させるような映画館、 リヒトシュピーレ(下右写真)は、 なんと創業1906年の映画館で、1961年まで頑張って営業を続けてきたのだけれど、 コスモスにとても太刀打ちできなくて営業を辞めざるをえなかったそうだ。 この映画館は1994年、映画好きの人達が集まって再び営業を開始している。 毎週のように日本映画をプログラムに入れている、要チェックの映画館! 少ない座席と言い、プログラムの練れた感じと言い、まさにミニシアターを思い出させる。
カール・マルクス・アレ−には 旧東独映画館インターナショナルもあるし、 アレクサンダープラッツにはシネマックスだったか、ハリウッド映画を良くやってる大きな新しい映画館もある。 ちょっと行ったと所には、最近やはり閉館を余儀無くされた、バビロン。ベルリンには映画館が多すぎる、とはよく聞くが、98年から27軒もの伝統ある映画館が潰れたそうだ。 小さな良いプログラムを地道に続けている映画館が無くなってしまうのはとても残念。 だから、このリヒャルト=ゾルゲ・シュトラーセにあるリヒトシュピーレには頑張って欲しいので、暇があったら見に行こうと思っている。
さて、この通りは大部分は住宅街、一部は墓地で、後はなんだか廃虚みたいな工場跡地がある。 その住宅街の一角に、小さなギャラリーがある。 RS21は、ペーターという人がが自分の家の一部をギャラリーとして使っているギャラリーで(昔そう聞いたけど今も住んでいるのかな?)、 ベルリン在の日本の人が展覧会をしたり、イベントをしたりしているので、たまに、それを見に寄らせてもらう。 先日は知人の展示のオープニングパーティがあり、そこでは焼肉を出して大盛り上がりだった。 スマデリという、可愛らしい、日本食材店兼軽食レストランみたいなお店がフリードリッヒスハイン、 ボックスハーゲナー・プラッツの近くにあるのだが、 その店主?のユミさんという人が焼肉を出していたのだ。 彼女はデュッセルドルフの芸術アカデミー出身で自分も絵を描いていて、 確か、日本生まれの第2世代韓国人と聞いたことがある。 私も単純なので、韓国の人が作る焼肉→美味と思って楽しみにして出かけた。 たっぷりタレを染み込ませてジュージュー焼かれている焼肉の香ばしい香りと、夏のちょっと湿った空気が混じって、道中に溢れ、 オープニングパーティの雰囲気を盛り上げていた。
この、リヒャルト=ゾルゲ・シュトラーセは、住宅街の真中にこんなギャラリー、映画館がぽっと現れる不思議な通り。 街路樹が夏は生い茂って、いい感じだけれど、上を見てのんびり歩いてはいけない。ベルリン名物、道のど真ん中に鎮座する犬糞に遭遇する危険性大だから。
余談だが、散歩の途中、この道と交叉するミューザム・シュトラーセというのを発見した。 リヒャルト=ゾルゲというのは、ソ連防諜機関の偵察要員で、 第二次世界大戦終戦間際に亡くなった人だそうだが、 彼の名字、ゾルゲには『心配、懸念』等の意味がある。ミューザム、は『骨の折れる、困難な』の意。 どちらも人の名前だが、『心配』と『困難』の交差点というのはなかなか面白いなあと思った。
追記:リヒャルト・ゾルゲについて(2005/7/22)
ゾルゲ事件・・日本政府の機密をソ連に伝えていた疑いで1941年ドイツ人新聞記者でソ連赤軍諜報員リヒャルト=ゾルゲと尾崎秀実(ほつみ)らが逮捕された事件。 ・・まったく知りませんでした! 2003年、本木雅広主演(尾崎秀実役)で映画化もされた。 ちなみにリヒャルト・ゾルゲ役はイアン・グレンという役者さん。 興味ある方は映画の公式HP『スパイ・ゾルゲ』を御覧あれ。 ベルリンでの撮影も行ったよう。 ゾルゲは、戦争をなんとか回避しようという目的で、日本の情報をソ連に送っていたという。 ソ連時代に建てられたという彼の銅像は今でもあるのだろうか?


*通りのヒトカケラ*
綺麗に整ったアパートの壁に、
『ドイツの秩序に反対する!この壁をカラフルにせよ』
ドイツ人のグラフィティは
なんというか・・意識が高い?のか?






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